ウェザーニューズ/海運業界向けCO2排出量監視サービス「CIM(Carbon Intensity Monitoring)」の本格提供を開始 グリーン物流(環境) 2023.06.17 海運業界向けCO2排出量監視サービス 「CIM(Carbon Intensity Monitoring)」の本格提供開始 CO2排出量をリアルタイムに把握する革新技術で、日本海事協会の認証を取得 株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、今年4月に開始した海運業界向けのCO2排出量監視サービス「CIM(Carbon Intensity Monitoring)」をバージョンアップし、本格的に提供を開始したことを本日発表しました。CIMは船舶のCO2排出量を見える化するサービスです。 今年6月、国際海事機関(IMO)によって、温室効果ガス(GHG)の削減目標を達成するため、大型外航船を対象にした新たな規制「燃料実績格付け制度」が採択されました。これにより、2023年からは船舶の年間平均燃費実績から環境性能が評価されるようになるため、船主や船舶管理会社では燃費対策が急務となっています。 そこで、当社は新規制に対応するため、航海時にリアルタイムで”CO2排出量”を把握できるようCIMをバージョンアップしました。また、航海終了時には、CO2排出量や燃料消費量、航行距離などから”環境性能”を評価できる機能も追加しました。CIMを活用することで、船主や船舶管理会社は所有する船舶のCO2排出量と環境性能をタイムリーに確認することができます。 加えて、本サービスは一般財団法人日本海事協会によって、デジタル技術を活用した革新的なソリューションであることが認証されました。海上輸送時のCO2排出量を算出する際は、運航データや算出方法の信憑性が求められますが、本サービスは第三者の認証のもと、各社が社内のデータ管理や対外的な公表データとして安心してご活用いただけるものとなります。 船舶のCO2排出量を見える化する「CIM」 当社は、海運市場の環境対策をデジタル技術で支援する「環境運航支援サービス」の一つとして、船舶のCO2排出量を見える化するCO2排出量監視サービス「CIM(Carbon Intensity Monitoring)サービス」の本格的な提供を開始しました。海外ではすでにサービスを始めていましたが、この度国内でも本格的に提供を開始します。 CIMの画面イメージ航海ごとの環境性能をA〜Eの5段階で評価(Aは環境性能が高く、Eは低い) 本サービスは、CO2排出量の見える化を目的とし、船舶のCO2排出量や環境性能の計測業務を支援するサービスです。4月にサービスを開始して以来、当社は船舶ごとのCO2排出量や燃料消費量などのデータを収集し、蓄積したデータを船主や船舶管理会社にAPIなどで航海終了後に提供してきました。 今回のバージョンアップによって、6月に採択されたIMOが定める”環境性能”をタイムリーに把握できるようになりました。本サービスは、CO2排出量や燃料消費量、航行距離など航海実績をもとに、航海ごとに環境性能を5段階のランクで評価します。 今回、web上で閲覧できるようになったため、船主や船舶管理会社が所有する船のCO2排出量や環境性能を常時モニタリングすることができます。さらに、データは航海直後にクラウドを経由してAPIなどでも船主や船舶管理会社に提供されるため、企業の運航管理システムなど既存システムとの連携も容易にできます。 CIMの活用イメージ 今後は、2022年中に最適航路選定を支援する「OSR(Optimum Ship Routeing)」サービスにおいて、CO2を削減する環境性重視の航路・速度を選択できる機能を追加します。OSRは、船舶の安全性や経済性(燃料消費を抑える航海)など多様化するニーズに応えるルーティングサービスです。燃料やスピードなど船舶ごとのパフォーマンス特性を解析し、目標を達成する上で最適なルートやエンジン回転数などを船長や陸上の運航管理者に共有しています。OSRに新たなニーズである「環境性」を追加することで、航海中からCO2排出量を抑える航海が可能になります。また、航海終了後には、CIM上においてベースライン式算定手法で実際に削減されたCO2排出削減量をタイムリーに把握いただけます。OSRとCIMと組み合わせることで、環境性を重視した航海とそれによる実際の排出削減量の見える化が可能になります。 なお、本サービスは、IMOの規制対応への用途に加え、海上サプライチェーンに関わる荷主企業からの要請にも対応しています。2020年に穀物メジャーや欧州トレーダー、石油会社など大手用船者が、海上輸送のGHG排出量を測定・評価する国際的枠組み「Sea Cargo Charter(SCC)」を立ち上げました。これは、海運会社が航海終了後に燃料消費・GHG排出報告書を提出することなどを通じて、「気候変動への配慮を用船の決定に組み込むことを可能にする」ことを目指すもので、本サービスはこのような民間レベルでの要請にも対応が可能です。 海運業界では燃費対策が急務、最低評価で改善計画の提出が義務付け IMOは、2050年までにCO2の総排出量を2008年の50%に削減するという目標を掲げています。今年6月には、IMO 第76回会合海洋環境保護委員会(MEPC76)において、船主に対する短期対策の一つとして、大型外航船を対象に1年間の燃費実績を事後的にチェックする「燃料実績格付け制度」が採択されました。 「燃料実績格付け制度」は、各船の1年間の年間平均燃費実績(Carbon Intensity Indicator: CII)を計測し、格付け(A〜Eの5ランク)によって評価する制度です。E評価、または3年連続D評価を受けた船舶には、翌年度に改善計画の提出・主官庁承認が義務付けられます。また、CIIの削減率は毎年2%ずつ厳しくなります。2023年には本条約改正の発効が予定されているため、海運業界では「燃料実績格付け制度」への対応の準備が急務となっています。そこで、ウェザーニューズは新たな環境規制に対応するようCIMをバージョンアップしました。 CIMが日本海事協会の認証取得 CIMが一般財団法人日本海事協会の革新技術を対象とした新たな認証サービス「Innovation Endorsement」(※)の製品・ソリューション向け認証で第5号認証を取得しました。今回、日本海事協会によって様々な構成や機能について詳細に検証され、本サービスの基盤技術が最新のデジタル技術を活用した革新的なソリューションであることが認証されました。 本サービスは、IMOによって採択された新たな環境規制は、航海データの品質監視がより厳格に求められることから検証されました。また、カーボンフットプリントの導入に伴い、荷主企業の間でも貨物海上輸送におけるCO2排出量を把握するニーズが高まっています。このような背景から、海運業界では海上輸送時の効率的かつ高精度なCO2排出量のデータが求められています。本認証では、精度の高いCO2排出量データを算出するためのCIMの機能が第三者によって検証されました。 なお、本サービスの基盤システムは、EU-MRVやIMO-DCS規制対応で利用されているESM(Emission Status Monitoring)サービスで運用されており、国内外延べ45社950隻の船舶に対して利用実績があり、様々な社内アプリケーションと専門スタッフによる分析により運航データの品質監視や、環境報告書の作成に役立てられています。 ※Innovation Endorsement:日本海事協会が 2020 年に開始した革新技術を対象とする第三者認証サービス。安全性向上・環境保全といった課題解決、持続可能な発展に向け、デジタル変革を活用した革新技術の実現可能性や価値をステークホルダーへ証明するもの。 海運業界向けに環境対策をデジタル技術でサポートする「環境運航支援サービス」 昨今、気候変動の影響で極端気象が増加してきたことで、パリ協定の成立や国連のSDGs(持続可能な開発目標)の採択など、地球温暖化防止をはじめとする地球環境保全への要請が高まり、業界や国を越えて様々な取り組みが始まっています。海運業界も例外ではなく、IMOが2050年までにCO2の排出量を50%削減するという目標を掲げています。 そこで、ウェザーニューズは環境対策をデジタル技術でサポートする4つの「環境運航支援サービス」を段階的に打ち出していきます。これまでに、CO2などのGHG削減を支援する「CO2排出量監視サービス(CIM)」や座礁事故防止による海洋環境保護に貢献する「座礁対策支援サービス(NAR)」の提供を開始しました。来年以降は、第三弾として経済的損失を補償する「VPP(Voyage Planning Protection)」、第四弾としてCO2排出削減量を客観的に評価する「MCB(Marine Carbon Blocking)」のサービス開始を計画しています。MCBでは、海運業界が実施している気候変動への取り組みを支援するため、ブロックチェーン技術を用いて海運業界のCO2排出削減量を客観的に評価します。 これらのサービスは、海上輸送に関わる荷主企業、運航船社、船主、船舶管理会社を対象に、船舶・船員・貨物の安全性、経済性、環境性を同時に実現することを支援します。DX(デジタルトランスフォーメーション)のテーマに対しては、船陸の双方に革新的なIT技術をご活用いただくことで、リモート業務体制における業務効率の向上、情報セキュリティ対策、GHG排出量の見える化などをサポートしていきます。 本サービスにご興味のある企業の方は、以下URLよりお気軽にお問い合わせください。 https://jp.weathernews.com/contact/inquiries-about-our-services-biz/