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アスタミューゼ/製造業が多く保有する物流機器技術の意外な用途展開として15分野での可能性、宇宙の持続可能性を実現するスペースデブリ除去ロボットの事業展開を紹介

物流関連商品 2023.06.17

【知の探索と深化】製造業が多く保有する物流機器技術の意外な用途展開として15分野での可能性 ~宇宙の持続可能性を実現するスペースデブリ除去ロボットの事業展開~

アスタミューゼ株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 永井歩)の技術の用途展開・新規事業探索ツールであるイノベーションマトリックスで分析した結果、物流機器(マテハン機器)関連技術の応用から、遠隔医療・遠隔手術、予防医療・見守り、フードテック、機能性衣料/装飾品・ファッションテクノロジー、海洋資源開発・深海探査等の15分野に渡る成長産業での展開可能性が見つかりました。その中で一部ではありますが、宇宙分野における事例をご紹介致します。
アスタミューゼ社の技術の用途展開・新規事業探索ツールであるイノベーションマトリックスで分析した結果、製造業の保有する物流機器関連技術から、遠隔医療・遠隔手術、予防医療・見守り、フードテック、機能性衣料/装飾品・ファッションテクノロジー、海洋資源開発・深海探査等など、合計15分野での多岐に渡る成長産業での展開可能性が見出されました。例えば、その中で一部ではありますが、宇宙分野においては、「スペースサステナビリティ(宇宙の持続可能性)を実現するデブリ除去ロボット」 という具体的なビジネス展開の可能性について、一つの事例をご紹介致します。

背景:スペースデブリ(宇宙ごみ)に関する社会課題

ZOZO創業者の前澤友作氏の宇宙旅行が話題となるなど、「宇宙ビジネス」が盛り上がりを見せています。かつて宇宙といえば、アポロ計画、スペースシャトル、国際宇宙ステーション(ISS)など、国際主導の宇宙開発プロジェクトが中心でした。しかしながら、2000年代のイーロン・マスク氏が率いる宇宙開発企業SpaceX社などの創業を皮切りに、民間企業が宇宙ビジネスを牽引する時代が到来し、小型ロケットを多数・高頻度で打ち上げ、小型の衛星を大量に送り込む形となりました。

ここで、今後のさらなる宇宙ビジネスイノベーションにおいて留意したいことがあります。それは、ロケットや人工衛星の残骸である「スペースデブリ」(宇宙ゴミ)問題です。現在、宇宙空間には、「人工衛星などの壊滅的破壊」につながる10 cm以上のスペースデブリが2万個、「宇宙ミッションの終了」につながる1 cm以上のスペースデブリが50万~70万個、「衛星の故障など」につながる1 mm以上のスペースデブリが1億個以上存在すると報告されています。

Credit: JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)
出典:https://www.jaxa.jp/projects/debris/index_j.html

このように地球と同様、人類が活動する場所ではゴミが発生し、実際、このスペースデブリ問題はすでに顕在化しています。特に、2007年の中国の衛星破壊実験や、2009年の米露の通信衛星の衝突によってこの問題は深刻化し、より注目を集めるようになりました。さらに、衛星コンステレーション(多数の人工衛星を協調して動作させる運用方式)がゲームチェンジャーとして期待されるなど、大量の衛星の打ち上げが行われていくなかで、今後、スペースデブリへの取り組みの重要性はますます高まると考えられます。

では、物流機器技術を用いてデブリの軽減に貢献し、スペースサステナビリティを実現する事業展開とはどういうことか、順を追って説明します。

物流機器関連の特許を検索

物流機器関連の特許のうち、セントラル自動車(現・トヨタ自動車東日本株式会社)が出願している特開2010-017834「マテリアルハンド用クランプ機構」に着目します。出願内容は「自動車製造工場の組立工程で利用されるワーク搬送、ワーク組立などの作業を行う作業用ロボットに関するもので、クランプ力が大きく搬送中にワークの落下を防止できるクランプ機構を提供」するものです。

この特開2010-017834が牽制(注)した特許出願文献から、新規用途を探索していきます。ある特許公報が牽制した特許出願文献をリストとして確認するのは難しいですが、アスタミューゼは独自の牽制データベースを保有しているため、同特許が牽制した特許出願文献を見出すことが可能です。

(注)特許出願された技術が、先行技術の特許出願により権利化を阻害された特許

結果、特開2018-199183が牽制した特許出願文献の一つとして、JAXAが出願している特開2018-199183「ロボット、把持システム」を見出すことができました。出願内容は「スペースデブリとなったロケットを捕獲するためのもので、形状や径の大きさが異なる把持対象に対しても、ロボットの位置誤差や姿勢誤差に対してロバスト性に優れる特徴を有する」ものになります。

この牽制関係を得ることで、セントラル自動車が有する「搬送ロボット」の技術を活用し、「スペースデブリ除去ロボット」への用途展開を検討できるのではないかという着想が得られました。

ロボットアームによるスペースデブリ除去

宇宙空間でのロボティクス技術というと、何を思い浮かべるでしょうか。例えば、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されているロボットアーム「カナダアーム2(Canadarm2)」が想像されるかもしれません。もしくは、NASAの火星ローバー(探査車)「パーサヴィアランス(Perseverance)」のロボットアームでしょうか。宇宙でも様々なフィールドでロボットアームが活用されており、将来の宇宙ビジネスが拡大していく上で、ロボティクス技術は大きな役割を果たすと考えられます。

スペースデブリ除去においてもロボティクス技術が活躍するケースがあります。スイスのスタートアップ企業ClearSpaceは、ロボットアームを使ってスペースデブリを除去する計画です。衛星をスペースデブリまでランデブーし、4本のロボットアームを使ってスペースデブリを捕獲します。このロボティクス技術は、スペースデブリをしっかりと捕捉、保持して、離脱させない技術など、高度な技術が詰まっています。

Credit: ClearSpace
出典:https://clearspace.today/

また、欧州宇宙機関(ESA)は、ClearSpaceに対して1億300万ドルもの多額の資金を拠出し、デブリ除去ミッション「クリアスペース1(ClearSpace-1)」を実施することを決定しています。同ミッションは、2025年開始予定となっています。ClearSpaceは、実際のデブリを除去する初のミッションを担うこととなり、ロボティクス技術が宇宙の新たなフィールドを開拓し、活躍することに胸が高鳴ります。

以上からビジネスとしても期待されるデブリ除去でありますが、未だ技術的な課題が存在しています。この点において、今回のイノベーションマトリックスの分析から見出されたように非宇宙系企業が活躍できる可能性が大いにあり、宇宙という新しいビジネスフィールドへの進出でスペースサステナビリティの実現に貢献できることに期待されます。

<著者:アスタミューゼ 中前佳那子 博士(理学)>

さらにくわしい分析は……

アスタミューゼでは、特許に関する牽制データベースを用いて、技術の新規用途の探索が可能です。自社が保有する技術を基点に、牽制データベースを参照することで、自社保有技術を活用した新規事業案創出を支援いたします。また、自社だけでなく、自社がウォッチする競合他社の類似技術も対象に入れて牽制データベースを参照することで、自社が属する業界から異業種異分野への新規参入も検討することが可能になります。 お問い合わせはこちらへお願いします。

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