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富士通/シンガポール海事港湾庁と 海上交通マネジメント技術を活用した実証実験を開始

物流システム 2023.06.17

富士通・SMU・A*STAR、シンガポール海事港湾庁と
海上交通マネジメント技術を活用した実証実験を開始

富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:田中 達也、以下 富士通)、シンガポール科学技術研究庁(Agency for Science, Technology and Research、所在地:シンガポール、長官:リム・チャン・ポウ、以下 A*STAR)の組織であるInstitute of High Performance Computing(IHPC)、Singapore Management University(所在地:シンガポール、学長:Arnoud De Meyer、以下 SMU)は、シンガポール海事港湾庁(Maritime and Port Authority of Singapore、所在地:シンガポール、代表:Andrew Tan、以下 MPA)と、シンガポール港における船舶の交通マネジメントのための技術を活用して、共同実証を開始しました。

本共同実証では、AI(人工知能)とビッグデータ解析などを用いて、海上貿易が盛んで船舶の交通量が多いシンガポール港とその水域の管理を最適化する技術を共同で研究開発し、MPAから提供される船舶の交通データをもとに、海上の渋滞予測や衝突などのリスクが高いホットスポットの予測精度を検証します。

富士通、A*STAR、SMUは、2014年に共同で設立した先端研究組織(Urban Computing and Engineering Center of Excellence、以下 UCE CoE)の下、2015年より海上交通マネジメント技術の研究開発を進めてきました。

今回は、これまでUCE CoEが行ってきた高速・大規模計算科学技術を用いて持続可能な社会創造に向けたソリューション・技術の開発をさらに進めるもので、業界や政府が直面する社会課題に応用し、シンガポールの実環境で実証を行います。

今後は、これまでの共同研究開発の成果と、今回のMPAとの検証により得られた知見やノウハウを統合し、富士通の海事向けソリューションとして、提供していく予定です。

背景

マラッカ・シンガポール海峡は、船舶の交通量の多い世界有数の海上交通路の一つ(注1)で、世界の商用の海運交通の重要な航路として、海上運行の安全性を維持し続けることは、極めて重要です。

今回の実証においては、富士通のデータ解析技術とAI技術、IHPCがもつエージェント・ベース・モデリング(注2)やシミュレーションの知見と確率モデリングおよび機械学習の手法、SMUが得意とする大規模マルチエージェント最適化モデリング(注3)の知見を活用します。

共同実証における活用技術

富士通、IHPC、SMUの研究開発の成果として、船舶の交通マネジメントの改善に向けた技術を応用して、MPAが保有する船舶データを取り入れて検証を行います。

  1. リスクおよびホットスポットの算出モデル(富士通)
    • 様々なリスクモデルの統合によって、船舶同士のニアミスのリスクを精緻に定量化するモデル
    • 時空間データ解析を用いて、刻々と変化する海上におけるリスクのホットスポットを検出するモデル
  2. 予測モデル(IHPC)
    • 機械学習と運動物理学を用いて直近の船舶の軌跡を高精度に予測するモデル
    • 過去の船舶データを活用して、船舶の型ごとの交通パターンに基づいた今後の海上の交通状況を予測するモデル
  3. インテリジェント・コーディネーション・モデル(SMU)
      • 海上における衝突事故やニアミスを防止するために迂回ルートを導出するモデル
      • リスクが高いホットスポットを減らすために船舶の航行タイミングを調整するモデル

      ※いずれのモデルも、リスクの軽減と最小化、スムーズな海上運行の持続に向け、リアルタイムな意思決定を支援するものです。

上記のモデルについて、例えば、IHPCがもつ直近の船舶の軌跡予測モデルと富士通のリスク計算モデルを組み合わせることで、ニアミスが起こる10分前にリスクを検出することが可能となり、海上運行の安全性向上につながります。

また、IHPCの海上における今後の交通予測モデルと富士通のホットスポット計算モデル、SMUのインテリジェント・コーディネーション・モデルを組み合わせることで、刻々とリスクが高まるホットスポットを、30分前に予測し、未然に衝突などのリスクを軽減することができます。

MPA アシスタント・チーフ・エグゼクティブ M Segar氏のコメント

MPAは、シンガポール港における海上運行の安全性を強化するために、AIを活用した技術の開発を支援します。今回、さらに研究開発を進めるため、データと情報の提供に加え、シンガポール水域への適用のために、UCE CoEが開発した技術を検証します。

シンガポールが将来の港湾運営を強化する技術を開発する中で、研究とイノベーションは海事業界にとって鍵となるでしょう。最近導入されたSea Transport Industry Transformation Mapの一部として、MPAは、シンガポール港内における海上運行の安全性の水準を引き上げるため、地域の高等教育機関と技術企業が連携して新規技術を創出する取り組みを支援しています。今後、それらの研究成果が「MPA Living Lab」で検証できることを楽しみにしています。

A*STAR IHPCエグゼクティブ・ディレクター Alfred Huan氏のコメント

A*STARは、富士通、SMUそしてMPAとの連携を深め、シンガポールや他の海洋国家が直面する課題を解決していけることを嬉しく思います。こうした官民の提携モデルは、公的機関と民間企業のプレイヤーの両方の技術を活用し、多くの専門分野にわたるアプローチを通じてより連携を強化し、将来的なニーズに適合する革新的なソリューションの開発において、総合的な能力を高めることにつながります。

SMU ラボ・ディレクター兼UCE CoE リード・インベスティゲーター Lau Hoong Chuin氏のコメント

マルチエージェント技術は、これまで無人航空機や無人の陸上車両の運行調整などに利用されてきました。MPAとのプロジェクトにおいて、SMUは、航空と海運との相違点や制約に配慮した、次世代の海事交通マネジメント技術を提案し、新境地を拓いています。自律的に軌跡を予測して走行する船の誕生により、この技術は人為ミスを減らし、海上運行の安全性を向上させることで、港湾交通管理のあり方を変革するものとなるでしょう。

富士通研究所 シニアアドバイザー 鈴木祥治氏のコメント

海上運行の安全性強化は、達成するための正しい道が一つではないことから、大きな課題となっています。革新的なアイデアを受け入れるA*STARとSMUとの連携に富士通が価値を見い出しているのはそのためです。富士通では、ソリューションの適用可能性を検証するMPAの支援にも感謝しており、この関係は、富士通が推進している「Co-creation」と非常にマッチしています。富士通は独自の技術だけでなく、様々な関係者の技術を統合し、検証するプラットフォームを提供できていることを嬉しく思います。富士通は、本実証を通じて検証された技術を用いて、シンガポール港における海上運行の安全性強化に寄与することを目指しています。

以上

注釈

注1 船舶の交通量の多い世界有数の海上交通路の一つ:
シンガポール港には常に約1,000隻の船舶があり、2~3分に1隻がシンガポール港を離発着している。(出典:MPA)
注2 エージェント・ベース・モデリング:
自律的な固体・組織体の行動・相互作用を、全体への影響の観点からシミュレーションするための分析手法。今回の場合、対象となる個体・組織体は船舶。
注3 大規模マルチエージェント最適化モデリング:
自律的に判断・行動する多数のエージェント間の相互作用をシミュレートし、社会課題やビジネス課題に対する最適な解決策を求めるためのモデリング技術。
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