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川崎汽船/力を集め、次代への架け橋となる1年に(2018年 社長年頭所感)

物流全般 2023.06.17

2018年 社長年頭所感
「力を集め、次代への架け橋となる1年に」

川崎汽船グループの皆様、新年あけましておめでとうございます。
2018年のスタートにあたって、ひとことご挨拶申し上げます。

  2017年は、世界が注目した米国の新大統領の就任とともに幕を開けました。トランプ大統領はアメリカ第一主義の信条を強く打ち出し、TPP(環太平洋経済連携協定)やパリ協定からの離脱を表明しました。ヨーロッパにおいても、EU離脱を決めたイギリスでは総選挙で与党が過半数を割り込みましたが、ドイツやフランス、オランダの国政選挙では、右派や反EU政党が躍進を見せ、反グローバリズムの支持の大きさが明らかになりました。保護主義の台頭は、グローバルな物流に携わる海運業界にとって今後の動きが懸念されるものです。また、過激派組織イスラム国が崩壊した後の中東情勢や、挑発的な行動を繰り返す北朝鮮などは、地政学的な不安定要因となっています。

  不透明感ある国際情勢ながら、世界経済は緩やかな上昇に転じています。米国や欧州、中国では経済成長が加速あるいは回復を見せ、日本においても海外景気の回復や好調な雇用を背景に企業業績が上向きました。世界的に経済活動が活発となったことで、2016年には金融危機以来最低を記録した世界経済の成長率は、昨年以降、上昇の度合いを強めていると見られています。

  グローバルな物流を事業基盤とする当社グループは、このような国際情勢や世界経済の影響を直接・間接的に受けながら事業を行っています。2016年度には、コンテナ船とドライバルクの両主要セグメントにおいて歴史的な市況低迷の荒波を受けましたが、今年度においては、船腹供給圧力が弱まった一方、国際的な海上貨物の荷動きは堅調に推移し、市況は底を脱し徐々に回復に向かっています。当社グループは、一昨年・昨年と二期にわたって行った大規模な構造改革による競争力の強化と、回復基調にある市況の修復を受け、2017年度上期の業績は最終赤字だった前年度から黒字に転換することができました。役職員一同の力を合わせた取り組みがようやく実って来たものといえますが、一方で需給バランスの本格的な回復には今暫く時間を要すると見られ、引き続き厳しい状況に備えておくことが必要です。

  昨年4月に発表した中期経営計画『飛躍への再生 〜   Value for our next Century』では、創立100周年を迎える2019年度までの3ヵ年で、持続的な成長を可能とする経営基盤の再構築を図ることを主眼としています。
  この中期経営計画では、ポートフォリオ戦略転換、経営管理の高度化と機能別戦略の強化、ESG(Environment=環境, Social=社会, Governance=企業統治)の取り組みを大きな課題として掲げました。
   事業ポートフォリオの転換では、安定収益型事業を強化するとともに、次代の中核事業を育成し、収益の安定化と成長を図ります。ポートフォリオの見直しにおいては、事業リスク・リターン管理の高度化によって、リスク総量を管理しつつ資本コストに見合ったリターンを確保することを前提とします。また、それぞれの事業運営において重要となるのが機能別戦略で、グループの総力を結集して徹底的に顧客を重視しつつ、先進的な技術を積極的に取り入れ、それらを支えるプロフェッショナルで多様な人材の育成を進める方向性を掲げています。
  邦船三社によるコンテナ船・海外ターミナル事業の統合もポートフォリオ転換の第一歩であり、昨春売却した重量物船事業からの撤退も当社が今後目指すべき事業運営の将来像を見直した結果です。今年4月にサービス開始を予定するコンテナ船の新会社「OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)」は、事業統合により規模拡大のメリットを得るとともに、三社のベストプラクティスの採用によって競争力を強化し、パラダイムが変わりつつあるコンテナ船業界において高い存在感を発揮してくれるものと思います。持分法適用会社として運営形態は異なるものの、コンテナ船事業がグループの中核事業であることは変わらず、当社が全面的に支援をしていきます。

  コンテナ船事業の分離後も、川崎汽船グループは強みである高い輸送品質と顧客基盤を活かし、力強く成長していきたいと思います。そのためには、グループ全体が今まで以上に一体となり、それぞれの事業戦略を遂行することが求められます。川崎汽船グループの主体となるドライバルク、自動車船、エネルギー資源輸送、海洋資源開発の各事業においては、安定収益の拡充と技術革新・ビジネスモデル変革による新たな事業展開への取り組みを進め、物流事業はコンテナ船のネットワークを引き継いでお客様のニーズに的確に応える事業として進展を図ることで、新たなKライングループの姿を目指していきます。

  2018年は、当社が創立100周年を迎える前の最後の1年となります。本年はまた、当社初のフルコンテナ船である初代”ごうるでん げいと ぶりっじ”が北米航路に就航して50年という節目の年であるとともに、当社初の自動車運搬船”第一とよた丸”の竣工50周年の年でもあります。当時と今の一隻あたりの積載能力を比べると、コンテナ船は20倍、自動車船でも6倍まで拡大しました。半世紀の間に、事業の規模や事業環境は大きく変わりましたが、海運という事業が人々の生活や世界の経済活動を支える重要なインフラであることに変わりはありません。社会にとって重要な役割を担っているという自負と責任感を常に抱き、またこの責務を果たすには、「健康宣言」で掲げているように、心身の健康を維持し、持つ力を最大限に発揮していくことが求められます。

  この春、私たちは新生Kライングループとして大きな一歩を踏み出すとともに、この一年は次の100年に向けた足場固めを行う年でもあります。
皆さん一人ひとりが各々の役割を全うしプロフェッショナルとしてその力を集めることで、この1年が次代にわたる大事な架け橋になるものと信じています。新たな時代に向かって力を合わせていきましょう。

  最後になりますが、川崎汽船グループの皆さん、そのご家族のこの1年間のご健勝とご多幸、またすべての船舶の安全運航を祈念して、私からの新年の挨拶といたします。

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