帝人/米国 Continental Structural Plastics社を買収 SCM・製造拠点 2023.06.17 米国 Continental Structural Plastics社の買収について 帝人株式会社(本社:大阪市中央区、社長:鈴木 純)は、このたび、北米最大の自動車向け複合材料成形メーカーであるコンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチックス社 (Continental Structural Plastics Holdings Corporation、本社:米国ミシガン州、Chairman & CEO:Frank Macher、以下「CSP社」)の全株式を取得し、完全子会社とすることとしました。これにより、当社は北米における自動車向け複合材料製品事業の基盤となる強力な販売チャネルを獲得し、同事業のTier1サプライヤーとしてグローバル展開を加速していくことになります。なお、このたびの買収金額は、総額825百万米ドルとなります。 1.背景 (1)当社は長期ビジョンとして「ソリューション提供型事業体への進化」を掲げており、高機能素材の領域においては複合材料を中心に事業拡大を図るべく、自動車の量産部品への適用を見据えた事業展開を推進しています。 (2)世界的に環境規制の強化が進む中、自動車業界においてはCO2排出量の抑制や燃費効率の飛躍的な向上が求められ、従来は到達し得なかった水準の車体軽量化が不可避となっていることから、複合材料の適応部位拡大が喫緊の課題となっています。 (3)こうした中、当社では将来のさらなる車体軽量化を睨み、自動車向け複合材料製品事業の展開を加速するためのプラットフォームを構築して、自動車メーカーに対してより広範なソリューション提供を可能にする体制を早期に確立することを目指しています。 2.当社の取り組みの経緯 (1)2008年には複合材料開発センターを開設し、他に先駆けて複合材料製品の事業化に向けた技術開発と用途開拓を強力に推進。2011年には世界初となるCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastic:熱可塑性炭素繊維複合材料)の1分成形量産技術を確立。2012年には米国に複合材料用途開発センター、松山事業所にCFRTP一貫生産のパイロットプラントを新設し、「Sereebo」のブランド名で量産型CFRTP製品の開発、国内外の複数企業との共同開発を推進してきました。 (2)また、帝人グループで炭素繊維・複合材料事業を展開する東邦テナックス株式会社 において、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:熱硬化性炭素繊維複合材料)の端材を極小化するプリフォーム*製造技術「PvP」(Part via Preform)を核に一貫生産体制を構築し、顧客ニーズに合致した複合材料の生産体制を構築してきました。 (3)さらに、昨年は複合材料製品の物性評価における国際的な試験所認定規格である「ISO/IEC 17025」、本年は欧米の自動車メーカーがTier1メーカーに対して認証取得を必須としている品質マネジメントシステム規格「ISO/TS 16949」を取得し、グローバル水準の自動車部品メーカーに向けて体制構築を進めてきました。 * プリフォーム : 事前に炭素繊維シートを金型に合うように切り取り、賦形すること。 3.CSP社について (1)CSP社は、1969年の設立以降、自動車の軽量化のための樹脂製部品を北米の自動車メーカーに提供してきており、中でもGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic:ガラス繊維強化複合材料)などの熱硬化性複合材料を使用した自動車向け部品においては、北米最大のTier1メーカーとして、米国の主要な自動車メーカーと強固な関係を構築しています。 (2)また、自動車業界で「クラスA」と称される美麗な外観を有する外板部品においては、業界のグローバルリーダーとして、米国のみならず、欧州・日本の自動車メーカーに向けても数々の採用実績を誇っています。 (3)CSP社の概要は次のとおりです 社名 Continental Structural Plastics Holdings Corporation 設立 1969年 拠点 本社・開発拠点:米国ミシガン州 オーバーンヒルズ生産拠点:米国10拠点、メキシコ2拠点、フランス、中国 売上高 634百万米ドル(2015年12月期) 従業員数 約3,200名 事業内容 自動車向け複合材料/部品の設計・成形・加工 主な保有技術 シート・モールディング・コンパウンド(SMC)樹脂に硬化剤や増粘剤などを混合したペーストをガラス繊維などに含浸させたシートを金型で加圧加熱して成形する製法【特長】優れた生産性、表面性、寸法精度、品質安定性 主な製品 GFRPを用いた軽量・美麗な外観部品 4.今次買収について (1)今次買収の概要は次のとおりです。 買収金額 825百万米ドル 実施時期 2016年12月(予定) 出資元 Teijin Holdings USA Inc.(米国持株会社) 資金調達 手元資金および新規調達で充当(予定) (2)当社は、このたびの買収により、北米自動車市場における強力な販売チャネルを獲得すると同時に、CSP社が自動車メーカーから求められてきたさらなる軽量化や高強度化などの要求に対し、当社が有する炭素繊維複合材料の技術を活用することでより幅広いソリューション提案力を有することとなり、自動車向け複合材料製品事業において強固なプラットフォームを構築することができます。 (3)世界的な環境規制強化に伴う環境負荷低減やコストダウンといった自動車メーカーのニーズに対し、CSP社が有するGFRPや、当社が有するCFRTPなどの高機能複合材料により、「車体部品の軽量化」「部品点数の削減」「リサイクル性の向上」、さらに「従来部品を超える付加価値」を提供することができます。 (4)こうしたシナジー効果により、川上から川下に至る一貫でのソリューション提案が可能となり、当社が2014年に発表した修正中期計画において発展戦略として掲げた「高機能材料による新たな価値創造」の具現化へとつながっていきます。 5.今後の展開 (1)当社はTier1サプライヤーとして、素材選定から部品設計にまで踏み込んだ提案力の強化や、グローバル安定供給体制の確立とともに、2020年以降の環境規制強化に対応した車体軽量化に向けて提案力を強化するため、炭素繊維、ガラス繊維に限らない材料の拡充や、他の材料メーカーとの協業などを図り、自動車メーカーに対するソリューションプロバイダーとなることを目指していきます。 (2)さらに、CSP社の有するフランスの開発センターや、帝人グループの関連拠点を活用し、欧州・日本・アジアの自動車メーカーに向けた提案力を拡大することによりグローバル展開を推進していきます。 (3)こうした展開により、今後一層厳しくなる環境規制に向けたソリューションを提供する事業として、自動車向け複合材料製品事業を、2030年近傍に売上2,000百万米ドル規模に拡大していくことを目指します。 【 帝人株式会社 代表取締役社長執行役員 鈴木 純 のコメント 】 社長就任以降、10年、20年と社会から必要とされる企業であり続けるため、素材・ヘルスケア・ITの3つの領域での強みを活かし、それらを「融合」「複合化」することにより、顧客に新しい価値の提供を可能にするビジネスモデルの創造を追求しています。そして将来は、複合高機能材料とヘルスケアを大きな柱として、社会にソリューションを提供する企業体を目指しています。このたびのCSP社買収は、自動車向け複合材料製品事業のプラットフォーム構築につながるものであり、目指すべき将来像に向けた第一弾として、複合高機能材料拡大への橋頭堡となるものです。これを1つの起爆剤として、今後も帝人グループ一丸となって常に進化を続け、「未来の社会を支える会社への変革」に取り組んでいきます。