コラム

【物流AIシリーズ】物流AIが切り拓く変化と未来

目次

  1. 【物流AIシリーズ】物流AIが切り拓く変化と未来
  2. 1. 社会構造の変化と物流ニーズの多様化
  3. 2. 物流を取り巻く課題とAI・ロボティクスの可能性
  4. 3. AI・ロボティクスによる物流の変革事例と未来
  5. 4. 課題と今後の展望

【物流AIシリーズ】物流AIが切り拓く変化と未来

1. 社会構造の変化と物流ニーズの多様化

今日の日本は、2011年を境に人口が減少に転じ、少子高齢化、共働き世帯や単身世帯の増加といった社会構造の変化が進んでいます。これに伴い、物流に求められる機能も大きく変化しています。特に通信販売の利用が急速に拡大し、宅配便の取扱個数が急増しています。消費者の購買スタイルも変化し、コンビニエンスストアや都市型小型スーパーなどの出店が拡大しています。

物流においては、在庫量の削減や輸送の小口多頻度化、時間指定が進行し、複数の場所に分散していた保管機能の集約や流通加工の一体的な実施を行う物流施設が増加しています。これにより、業務の複合化・高度化や施設の大型化が進んでいます。しかし、年間約38億個に達する宅配便の約2割が再配達となり、労働力や環境の面で社会的なコストが増加する問題も発生しています。また、時間的制約が厳しくなり業務が複雑化する中で、通常と異なる事態への対応に余裕がなくなっています。



2. 物流を取り巻く課題とAI・ロボティクスの可能性

物流業界では、トラックドライバーの高齢化や労働力不足が深刻化しており、今後も現場を支える労働力への影響が懸念されます。また、過疎地など需要の少ない地域では、荷量の減少により配送に支障が生じる可能性もあります。このような状況において、個々の事業者が効率化や工夫を行うだけでは限界があり、物流に関わる全ての関係者が連携して課題解決に取り組むことが不可欠です。

AI、ビッグデータ(BD)、IoTといった新技術の登場は、物流分野に革命的な変化をもたらす可能性を秘めています。これらの技術を活用することで、物流の飛躍的な効率化とサプライチェーン全体の最適化が期待されます。

3. AI・ロボティクスによる物流の変革事例と未来

労働力不足の解消と生産性向上: トラック輸送、海上輸送、物流施設内の作業などにおける人手不足は深刻な問題です。AIとロボティクスを活用することで、トラックの隊列走行や自動運転化、ドローン配送、船舶の自動運航化・遠隔集中監視、物流施設での自動化・機械化を進めることができます。これにより、労働力不足の解消だけでなく、生産性の劇的な向上が見込まれます。

EC物流においても、Amazon RoboticsのKivaシステムやMujin Robotのピースピッカー、AutoStoreのようなロボット倉庫型ピッキングシステムなど、スマートロジスティクスが物流センターを変革しています。
ラストワンマイル配送では、宅配ロボットによる無人化や、AI・ロボットが活躍するネットスーパー専用センターの登場が期待されています。
サプライチェーン全体の最適化: IoT、BD、AIなどの技術を活用して物流分野における膨大なデータを収集・解析することで、サプライチェーン全体の最適化を図ることが可能になります。これにより、個々の事業者の取り組みだけでなく、事業者間で連携して輸配送の効率化やピークの平準化を図り、サプライチェーン全体の効率化・価値創造へと繋げることができます。
新しいビジネスモデルの創出: 物流分野におけるこれらの技術活用は、国際的に競争力を有する新しいビジネスの創出にも資する可能性があります。例えば、EC市場の急速な成長は、商品供給の拠点となる物流センターの運営や宅配サービスに革新を求めています。AIとロボティクスは、これらのニーズに応え、新たなサービスやビジネスモデルを生み出す原動力となります。
持続可能な物流の構築: 地球環境問題への対応も喫緊の課題です。AIを活用した最適な輸送ルートの選定や積載率の向上は、CO2排出量の削減に貢献します。また、トラックから鉄道や内航海運へのモーダルシフトを推進することも重要であり、AIは最適な輸送モードの組み合わせを提案するのに役立ちます。

4. 課題と今後の展望

AI・ロボティクスによる物流革命は大きな可能性を秘めている一方で、いくつかの課題も存在します。
データ連携の強化: 事業者間で伝票や電子データ形式が異なるなど、円滑な情報連携が阻害されている現状があります。サプライチェーン全体の効率化には、データの標準化と連携基盤の構築が不可欠です。
人材育成: 新技術を活用するためには、物流現場の人材だけでなく、サプライチェーンを管理し、AI・ロボティクス技術を導入・運用できる高度な人材の育成が必要です。
社会全体の理解と協力: 物流は社会インフラであり、一般消費者からは見えにくい活動ですが、その重要性は非常に高いです。再配達問題に代表されるように、消費者の行動が物流に与える影響も大きいため、消費者も含めた社会全体の理解と協力が不可欠です。送料無料など、物流コストが不明確な状況も、物流への理解を妨げる一因となっています。
これらの課題を解決し、AI・ロボティクスを最大限に活用することで、物流は「強い物流」へと変革し、日本の産業競争力の強化、豊かな国民生活の実現、地方創生を支える社会インフラとしての役割をさらに強化していくことができます。AIとロボティクスが切り拓く物流の未来は、単なる効率化に留まらず、より柔軟で、持続可能で、高い付加価値を生み出すものとなるでしょう。

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