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目次

  1. 【物流AIシリーズ】トラック事故、居眠り運転が多発 - AIで眠気予測、事故防止へ新たな取り組み 
  2. 〜少子高齢化時代の運行管理におけるテクノロジーの挑戦〜
  3. 眠気を数値化する「眠気スコア」とは?
  4. 実証実験の目的と展望
  5. 「ラストワンマイル」の革新を目指して
  6. テクノロジーが変える「働く環境」と「安全」

【物流AIシリーズ】トラック事故、居眠り運転が多発 - AIで眠気予測、事故防止へ新たな取り組み 

〜少子高齢化時代の運行管理におけるテクノロジーの挑戦〜

いま、物流業界は岐路に立たされています。少子高齢化が進む日本において、トラックドライバーの数は年々減少しており、2000年には約97万人だった運転従事者が、2030年には約52万人にまで減少すると見込まれています。つまり、たった30年でほぼ半減するという予測です。この危機的状況に、インターネット通販を中心としたEC市場の拡大が拍車をかけています。荷物は増え続けるのに、運ぶ人が足りない。こうした過酷な状況が、ドライバーに対する心身の負担をますます大きくしています。

疲労の蓄積が引き起こすリスクのひとつが、「眠気」による事故です。居眠り運転が原因となる重大事故は、ドライバー自身だけでなく、社会全体にも大きな影響を与えかねません。だからこそ今、運行管理者にはこれまで以上に高度な健康管理体制が求められています。単なるスケジュール管理や運転ルートの最適化だけではなく、ドライバーの体調そのものに目を向け、健康起因による事故を未然に防ぐ視点が不可欠となっているのです。

こうした課題に対して、新たなテクノロジーが立ち上がりました。アドダイス社が開発したのは、生物や機械、環境などの異常の「兆し」を捉える「予兆制御AI」を応用した「眠気スコア」です。この技術は、物流業界における健康起因事故を未然に防ぐことを目的とし、ドライバーの心身状態をAIがリアルタイムで解析。自覚がなくても、眠気の「兆し」を数値化して通知することが可能になります。

眠気を数値化する「眠気スコア」とは?

この「眠気スコア」は、0〜10の数値で現在および未来の眠気レベルを示すもので、スマートウォッチなどから取得されるバイタルデータ(心拍数など)を元にAIが解析を行います。ドライバーが自身の眠気を認識する前に、AIがそのリスクを捉えるという点が最大の特徴です。

たとえば、「現在は眠気レベル4、30分後にはレベル7になる予測」という情報が表示されれば、運行管理者は早めに休憩を取らせるなどの対応が可能になります。これにより、実際の事故を未然に防ぐことができるというわけです。

このシステムの実用化に向けて、2025年1月から4月まで、実証実験がスタートします。協力企業は、セイノーラストワンマイル株式会社のグループ会社であるココネット株式会社、株式会社地区宅便、日祐株式会社の3社。彼らの協力のもと、現場で働くドライバーがスマートウォッチを装着し、AIによる眠気スコアの分析とフィードバックを受けるという試みが行われています

実証実験の目的と展望

この実証では、主に以下の3つの観点から検証が進められています。

眠気スコアの精度検証
AIによるスコアとドライバー自身の実感との一致度を、アンケートを通じて検証。精度の高いスコア化を目指してアルゴリズムの改良に役立てます。

安全性向上への効果検証
眠気スコアが高まった際のアラートが、実際に事故やヒヤリハットを減少させるかどうかを検証。これにより、安全運転への寄与度が明らかになります。

データ収集とAI精度向上
日々の実測データを蓄積することで、個人差や時間帯などの環境要因に応じたスコア補正の可能性も検討。より実用的で多様な現場に適応できるAIシステムを構築していきます。

このようにして蓄積されたデータは、将来的には運送会社全体の健康管理マネジメントに応用できると期待されています。

「ラストワンマイル」の革新を目指して

この取り組みに深く関わっているのが、2024年にセイノーホールディングスの子会社として設立されたセイノーラストワンマイル株式会社です。ラストワンマイルとは、物流における「お客様との最後の接点」を指す重要なフェーズ。ネットショッピングや宅配サービスの広がりにより、そのニーズは今後ますます高まっていくと見込まれています。

同社は、買い物弱者問題や過疎地支援、再配達の効率化など、多岐にわたる社会課題に対し、物流を通じたビジネスの手法でアプローチしています。今回の実証実験も、ドライバーの命と生活を守るという社会的責任を果たすための一環であり、単なる企業の取り組みにとどまらない広がりを見せつつあります。

テクノロジーが変える「働く環境」と「安全」

今回の実証実験が成功すれば、眠気スコアは今後全国の物流拠点に導入される可能性があります。これは、テクノロジーが人間の限界を補完し、事故のリスクを未然に回避するという未来志向の取り組みです。

テクノロジーは、人手不足の穴埋めをするだけではありません。人が安心して働ける環境をつくり、より安全で持続可能な社会を支える力にもなります。ドライバーの健康を守ることは、その先にいる私たちすべての生活の安全にもつながっているのです。

眠気を可視化するAI──それは、単なる便利技術ではなく、物流業界が直面する課題に真正面から立ち向かうための新たな武器となり得るでしょう。

株式会社アドダイスニュースリリースからの記事が元となっています

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