目次 需要変動 × 人材 × 技術 が描く新しい物流標準 EC市場が拡大すればするほど、“需要の波”は激しくなる 人材不足は物流の宿命ではない “初日の1時間” がすべてを決める AI・自動化は“人の働き方を豊かにする”技術である EC物流の未来は「柔らかい設計」へ イー・ロジットが担う「総合最適」の役割 おわりに:柔軟性こそが、成長を守る YouTubeアーカイブ配信 需要変動 × 人材 × 技術 が描く新しい物流標準 先日開催された、シェアフル社 × イー・ロジット社による共催ウェビナー 角井亮一氏(イー・ロジット)、横井真人氏(シェアフル)の両氏が登壇し、 EC物流の現場で今なにが起き、これからどこに向かうのかについて 深い示唆を与える内容が続きました。 この総まとめとなる第4パートでは、 3つの講演とパネルディスカッションで語られたキーワードを統合しながら、 “EC物流の未来像” を描いていきます。 結論から言えば、今回のセミナーを通してもっとも強く浮かび上がったのは、 EC物流とは「柔軟性の産業」である。 という一点です。 EC市場が拡大すればするほど、“需要の波”は激しくなる まず強調すべきは、角井氏が繰り返し示した 「波動のリアル」 です。 EC事業は、キャンペーン・SNS拡散・メディア露出など、 外的要因ひとつで売上が大きく跳ね上がります。 これは良いニュースである一方、 物流現場には「今日売れた分を今日中に出荷してほしい」という要求として跳ね返ってきます。 角井氏の言葉は印象的でした。 「波動は“例外”ではなく“前提”。 これを処理できる設計が、EC物流の競争力を決めます。」 1日11万件の出荷に対応する処理能力や、 WMSによる動線制御、在庫配置の最適化。 これらはすべて “波動を飲み込むための柔軟性” を備えるための仕組みです。 需要の変動に耐えられない物流は、ECの成長を止めてしまう。 この事実が、まず最初に刻まれたポイントでした。 人材不足は物流の宿命ではない 次に鍵となるのが 人材の柔軟性 です。 横井氏の講演は、このテーマを一段深く掘り下げました。 シェアフルの利用者は1,100万を超え、 若年層を中心に「1日単位で働く」という文化が広がっています。 驚くべきは、スポットワーク利用者の 43%が正社員・派遣社員という事実。 「単発バイト」のイメージとは大きく異なり、 生活の安定と収入補填を両立するための“新しい働き方の選択肢”として浸透しています。 さらに、物流が若者にとって 興味ある業界の上位 に入っているというデータも示されました。 これはまさに、EC物流にとって追い風です。 波動対応としてのスポット 採用チャネルとしてのスポット 定着を左右する現場オペレーション この3つが相互に結びつくことで、 人材不足の課題は「解けない問題」から「設計次第で解ける問題」へと変化してきています。 “初日の1時間” がすべてを決める 両氏の話を通して最も印象的だったのは、 人が定着する現場には、特別な施策は必要ない という点でした。 横井氏は、リピート率が80%を超える現場の共通点として、 次のキーワードをあげています。 初日の説明が丁寧、不安が出やすいポイントを事前に明示、名前で呼ぶ、放置せず、最初の1時間を一緒に過ごす “たったそれだけ” ですが、 この“当たり前”を徹底できる現場は、スポットスタッフが自然と戻ってきます。 つまり、EC物流における人材課題は、 「採れない問題」ではなく「辞めてしまう問題」 であることが浮き彫りになったのです。 AI・自動化は“人の働き方を豊かにする”技術である パネルディスカッションで語られたもう一つの重要論点が、 AIと自動化の役割 です。 よくある誤解は 「AIが現場の仕事を奪う」という議論ですが、 角井氏の答えは明快でした。 「AIは、人がやらなくてよい仕事を減らすためにある。」 自動倉庫RENATUSの高速ピッキング、 カメラ付き検品台による誤出荷防止、 AIカメラによる類似商品判別。 いずれも、 人の負担を減らし、品質を上げるための技術 です。 横井氏もこの点を補足するように、 スポットワークとAIの未来は「対立ではなく補完」だと述べました。 AI → 作業効率を高める スポットワーク → 人の配置を柔軟にする 現場教育 → 新人がすぐに戦力化する データ → すべての指標を可視化する この4つが噛み合うことで、 EC物流はようやく“持続可能な構造”になるのです。 EC物流の未来は「柔らかい設計」へ 今回のセミナーを総合すると、 EC物流は次の3つの柔軟性によって再定義される時代に入っています。 需要の柔軟性 突発的な売上の山を飲み込む処理能力と設計力。 WMS、在庫配置、波動対応、複数拠点の活用。 人材の柔軟性 スポットワークを活用した必要量の確保。 採用の入口としてのスポット。 定着率を決める初日のオペレーション。 技術の柔軟性 AI・自動化・データ活用による“人が働きやすい現場”の実現 これらはバラバラの要素ではなく、 三位一体で未来のEC物流をつくる基盤です。 イー・ロジットが担う「総合最適」の役割 最後に、本セミナーの総括として浮かび上がったのは、 イー・ロジットが担う役割の大きさです。 波動に耐える出荷能力 自社開発WMSとBIレポートによるデータ活用 自動倉庫RENATUSなどの先端設備 アカウントマネージャーによる伴走支援 カスタマーサポートやささげ業務まで含めた広いBPO領域 これらは単なる“倉庫サービス”ではありません。 角井氏の言葉を借りれば、 「物流は裏方ではなく、企業成長の中枢である。」 という思想のもと、 EC事業の成長を止めないための“総合最適”を提供する会社です。 おわりに:柔軟性こそが、成長を守る 今回のセミナーで明確になったのは、 EC物流の未来は “柔軟性” というひとつの軸に収束していくことでした。 需要変動に柔軟、働き方に柔軟、技術活用に柔軟、現場設計に柔軟 この「設計思想」を持つ企業こそが、 激動するEC市場で生き残り、伸び続ける。 その象徴として、 イー・ロジットとシェアフルの両社が提示した未来像は、 EC事業者にとって極めて実践的であり、力強い指針になるはずです。 YouTubeアーカイブ配信 関連記事 「現場人材から見る物流戦略」セミナー ~EC物流×スポットワーク セミナー まとめ 「現場人材から見る物流戦略」セミナー ~:物流の未来は「人材×データ×柔軟性」がつくる 角井×横井氏対談~ 「現場人材から見る物流戦略」セミナー ~繁閑差と人材不足をどう乗り越えるか~ 横井氏講演コラム版 「現場人材から見る物流戦略」セミナー ~繁閑差と人材不足をどう乗り越えるか~ 角井講演コラム版