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  • 「現場人材から見る物流戦略」セミナー ~:物流の未来は「人材×データ×柔軟性」がつくる 角井×横井氏対談~

目次

  1. 波動対応・採用・現場設計…変化の中心にある“現場視点のリアル
  2. 物流現場のリアル:「波動は避けられない。だから設計で勝つ」
  3. 若者は “物流を選んでいる
  4. 1日で辞めない現場” は何が違うのか
  5. スポットワークは “採用チャネル” として成熟しつつある
  6. AI・自動化は“人の働き方を豊かにするもの
  7. まとめ:柔軟性のある物流が企業を成長させる

波動対応・採用・現場設計…変化の中心にある“現場視点のリアル

先日行われた、シェアフル社 × イー・ロジット社の共催ウェビナー
「スポットワークが変える物流の未来」。
角井亮一氏(イー・ロジット)・横井真人氏(シェアフル)が、
それぞれの講演に続けて参加した パネルディスカッション は、
講演をさらに深掘りする示唆に満ちた内容でした。

本記事ではそのディスカッションを、
講演内容との重複を整理しながら、
「EC物流の今とこれから」を立体的に描くコラムとして再構成します。

物流現場のリアル:「波動は避けられない。だから設計で勝つ」

ディスカッションの冒頭、話題になったのは “波動との向き合い方”。

角井氏は講演でも触れた通り、
EC物流では「突発的に跳ねる日」をどう設計に組み込むかが勝敗を分けると強調しました。

角井氏
「波動は “例外” ではなく “前提” です。
だからこそ、WMSや動線、在庫配置を含めた設計が重要になります。」

一方で横井氏は、
その波動に対応するための “人材面の柔軟性” の必要性を語ります。

横井氏
「波動はどこにも起きます。ただ、すべてを正社員で抱え込む必要はありません。
スポットワークで ‘必要な時に・必要な量だけ’ 人材を確保する。
その仕組みが企業の競争力の源泉になります。」

EC物流という領域では、物量(波動)・労働力(スポット)・管理(データ・BI)
がバラバラに語られがちですが、
今回のパネルではそれらが一体となって動く構造が浮かび上がりました。

若者は “物流を選んでいる

――ミスマッチを防ぐための「入口設計」

横井氏は、物流現場の「入口」の話をさらに掘り下げます。

スポットワーク利用者の多くは20〜30代。
しかも物流業務への興味関心が高いというデータがあります。

横井氏
「物流は未経験でも入れるうえ、業務の流れが明確。
‘自分にもできそう’ と感じてもらえる仕事なんです。」

しかし、問題はそこから先。
ミスマッチが起きれば1日で辞めてしまい、再び採用コストが発生する。

これに対して角井氏が示したのは、
現場のコミュニケーション設計の重要性。

角井氏
「物流って、初日がすべてなんです。
そこで安心感を作れた現場は、人が自然と定着します。」

近年のEC物流では、
「技術」「AI」「自動化」が語られがちですが、
本質はむしろ“人の心理を理解した現場設計”にあります。

1日で辞めない現場” は何が違うのか

――スキルよりも「最初の1時間」

横井氏が語った、非常に示唆的なデータがあります。

シェアフルの現場では、
初回参加後のリピート率が80%を超える企業 が実際に存在します。

では、その企業は何をしているのか。

横井氏
「特別なことはしていません。
ただ ‘初日の1時間’ を丁寧に過ごしているんです。」

その“丁寧さ”とは…
仕事の流れをしっかり説明する
不安になりやすいポイントを事前に伝える
名前で呼ぶ(個人として扱う)
雑に扱わない・放置しない

まさに、当たり前のこと。
しかしEC物流の現場は忙しく、
この“当たり前”が抜け落ちやすい。

角井氏も強くうなずきながらこう続けます。

角井氏
「物流は ‘人の産業’ です。
自動化も進むけれど、現場で働く人の気持ちを無視した運営は長続きしません。」

EC物流を支えるのはシステムだけでなく、
人が安心して働ける環境づくりなのだという点が印象深い議論でした。

スポットワークは “採用チャネル” として成熟しつつある

パネルの後半は、物流企業の採用についての議論に移ります。

従来の採用は、求人広告・面接・配属・ミスマッチ・早期離職という構造から抜け出せませんでした。

これに対し、横井氏が示したのは
「スポット→長期雇用」という新しい流れ。

横井氏
「スポットは ‘働いてから選ぶ採用’ を実現します。
ミスマッチが劇的に減るんです。」

角井氏もこれに強く共感し、
物流企業が抱える「採用→定着」の課題への処方箋として評価しました。

AI・自動化は“人の働き方を豊かにするもの

――EC物流の本当の未来

最後のテーマは、物流の未来像。

「AIによって仕事が奪われるのでは?」
という典型的な不安に対して、角井氏は非常に本質的な視点を示しました。

角井氏
「AIや自動化は ‘仕事を奪う’ のではありません。
物流現場で“人がやらなくてよい仕事”を無くすための技術です。」

具体例として挙がったのは、カメラ付き検品台・自動倉庫(RENATUS)・AIによる誤出荷検知・データを活用した在庫最適化。いずれも、人が本来やるべきでない作業から解放する技術です。

横井氏もこれに応じ、

横井氏
「AIとスポットワーク、人とデータ。
これらは対立する概念ではなく、むしろ“補完関係”です。」

という言葉でまとめました。

EC物流の未来は、

人の働き方を柔軟にし

技術がそれを支え

データが最適解を提示する

そんな“総合戦”の時代に入っています。

まとめ:柔軟性のある物流が企業を成長させる

角井氏の「波動に強い設計力」と、
横井氏の「柔軟な人材活用と入口設計」。

この2つはまったく別の話のようでいて、
実はEC物流にとって不可欠な両輪です。

需要が跳ねても折れない設計(角井)

必要な時に必要な人材が確保できる柔軟性(横井)

この掛け算によって、
EC物流は企業の“成長ドライバー”になる。

今回のパネルディスカッションは、
その事実を非常に実感を持って伝えてくれる内容でした。

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