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【物流AIシリーズ】事例②アスクルが描くEC物流DXの未来

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目次

  1. AIとロボットで「明日来る」を支える
  2. ロボットが変える現場の重労働と生産性
  3. AIが最適化する複雑なEC物流計画
  4. 持続可能な物流への挑戦

AIとロボットで「明日来る」を支える

今日のEC市場の急速な拡大は、私たちの生活を便利にする一方で、それを支える物流現場に大きな課題をもたらしています。特に、物流センターにおける人手不足や、重労働に起因する従業員の身体的負担(腰痛など)は深刻な問題です。
さらに、2024年4月から始まった「物流2024年問題」に代表されるトラックドライバーの労働時間規制は、物流業界全体にとって喫緊の課題となっています。
このような状況の中、「明日(あす)来る」という社名が示す通り、翌日配送を企業理念とするアスクルは、デジタル技術を駆使した物流現場の変革、すなわちDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進しています。彼らの取り組みは、単なる自動化にとどまらず、AIとロボットの力を活用して、よりスマートで持続可能な物流プロセスを構築しようとする、まさに未来を見据えた挑戦と言えるでしょう。

ロボットが変える現場の重労働と生産性

アスクルのEC物流DXの中心には、最先端のロボット技術が据えられています。
① デパレタイズロボットの導入
ASKUL Logi PARK 横浜では、これまで従業員が手作業で1日平均約6,000箱ものケース品をコンベヤに投入していた重労働を解消するため、Mujin社製のアーム型デパレタイズロボットが1台導入されました。これにより、従業員の作業負担が大幅に軽減され、庫内の労働環境の改善に貢献しています。
②自動棚搬送ロボット(AGV)の活用
三芳センターには、ピッキング作業の効率化と作業負担の軽減を目的に、ギークプラス社製の自動棚搬送ロボットGeek+ 「EVE P800R(AGV)」が116台導入されました。これらのロボットは、商品棚をピッキング担当者の場所まで自動で運び、従業員が棚まで移動する必要がなくなりました。その結果、ピッキングの定点化により生産性が倍増することが見込まれるだけでなく、商品棚を密集して配置できるようになり、収容在庫数の拡大にも寄与しています。
これらのロボット導入は、人手不足の解消と生産性向上という二つの課題に同時に対応し、物流現場の身体的負担を軽減するという、従業員にとっての大きなメリットを生み出しています。

AIが最適化する複雑なEC物流計画

アスクルのDXは、物理的なロボットの導入に留まりません。AIの活用により、これまで「ベテランの勘」に頼っていた高度な計画業務もデジタル化されています。
①AI需要予測モデルによる横持ち計画の最適化
物流センターと補充倉庫間の商品輸送、いわゆる「横持ち」の計画策定に、AIを活用した需要予測モデルが導入され、全国の物流拠点での展開が始まっています。従来、担当者が経験や知識に基づいて手作業で計画していた「いつ・どこからどこへ・何を・いくつ運ぶべきか」といった指示をAIが導き出すことで、需要予測の精度が向上し、作業工数が大幅に削減されました。
特に、ALP横浜センターでは、商品横持ち指示の作成工数が1日あたり約75%削減され、入出荷作業は約30%減、フォークリフト作業も約15%減という具体的な実績が出ています。
このAI需要予測モデルの活用により、トラックの車両台数を削減し、5トン以上のCO2排出量削減にも成功しており、「物流2024年問題」への対応やサステナビリティの観点からも大きな成果を上げています。
アスクルは、お客様が一度の注文で複数の商品をまとめて受け取れるよう、「1箱で届ける」というコンセプトを重視しており、これを実現するためには物流におけるオペレーションとテクノロジーの「組み合わせ最適化」が不可欠だと考えています。AIによる需要予測は、この複雑な「組み合わせ」を効率的に実現する鍵となっています

持続可能な物流への挑戦

アスクルのロジスティクス本部長である成松岳志氏は、EC物流問題への対応として、内部の自動化・省人化・最適化を進める「内部のDX」と、外部や顧客との「共創」という二つの基本的なアプローチに取り組んでいると述べています。これは、物流の課題が単一企業だけで解決できるものではなく、サプライチェーン全体での協力が不可欠であるという認識に基づいています。
アスクルのAIとロボットの導入事例は、単に業務を効率化するだけでなく、従業員の労働環境を改善し、顧客満足度を高め、さらには環境負荷の低減にも貢献するという、多角的な価値創造を目指すDXの好例と言えるでしょう。アスクルはこれからも、デジタルの力で最適な変革を進め、データやテクノロジーを活用したビジネストランスフォーメーションを実現していくことでしょう。

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