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【物流AIシリーズ】事例①楽天の自動宅配配送ロボット「楽天無人配送」が拓く未来

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目次

  1. 「楽天無人配送」が拓く未来
  2. 進化を加速させる「新たなロボット」と「広がる宅配配送網」
  3. AIが支える効率的な宅配配送システム
  4. 物流AIが描く未来図

「楽天無人配送」が拓く未来

日本のEC物流のみならず物流業界全体が直面する人手不足という喫緊の課題。この深刻な状況に対し、AIとロボット技術が示す解決策が、今、大きな注目を集めています。その最前線で、具体的な成果を上げているのが、楽天グループ株式会社が展開する商品宅配配送サービス「楽天無人配送」です。これは、まさに物流AIの可能性を具現化した、画期的な取り組みと言えるでしょう。
「楽天無人配送」は、2024年11月に東京都中央区の晴海周辺でサービスを開始して以来、自動配送ロボットが「スターバックス コーヒー 晴海 トリトンスクエア店」「スーパーマーケット文化堂 月島店」「吉野家 晴海 トリトンスクエア店」といった提携店舗の商品を、夜間や雨天時も含む毎日配送してきました。その利便性と先進性は、サービス開始当初から多くのお客様に利用され、需要の高さを示しています。
そして、2025年2月27日、楽天はこの「楽天無人配送」のサービスを大幅に拡充しました。この進化こそが、物流AIの活用がいかにダイナミックであるかを示しています。

進化を加速させる「新たなロボット」と「広がる宅配配送網」

今回のサービス拡充の大きな目玉は、米国で自動配送ロボットを展開するAvride inc.製の新たなロボット「Avride」の導入です。特筆すべきは、Avrideのロボットが日本でサービスに利用されるのは今回が初めてであるという点です。
Avrideは、世界各地に研究開発拠点を持ち、自動配送ロボットや自動運転車に関する高度な技術と豊富な運用実績を誇ります。彼らのロボットは、先進的な自動運転技術を駆使し、様々なセンサーやアルゴリズムを搭載することで、公道のような複雑な環境でも安全に自動走行できるという特長を持っています。実際に、米国でも多数のAvride製ロボットが商用利用されており、日本においても2024年12月13日に一般社団法人ロボットデリバリー協会の安全基準に基づく審査に合格しているため、その安全性は折り紙つきです。

このAvrideのロボットは、長さ86.1cm×幅65.5cm×高さ117.8cm(旗を含む)という機体サイズでありながら、最大積載容量は約54L、最大積載重量は25kgと、一度に多くの商品を運ぶことが可能です。最高速度は時速6kmとなっています。楽天は、このAvrideのロボットを順次10台まで増やす予定であり、配送能力の大幅な強化が期待されます。

さらに、「楽天無人配送」は、単にロボットを増やすだけでなく、そのサービス範囲も大きく広げています。新たに対象店舗としてケーキ店「パティスリーハット」やコンビニエンスストア「ファミリーマート 晴海センタービル店」が加わり、提携店舗数が増加しました。また、対象地域も晴海全域に加え、月島1~4丁目の一部、勝どき1~6丁目の一部へと拡大され、お客様が注文時に指定できるお届け場所の数は現在90カ所を超えています

AIが支える効率的な宅配配送システム

このような多種多様なロボットの導入と広がるサービスエリアに対応するため、楽天は独自開発の宅配配送管理システムを改良しました。このシステムは、注文内容に応じて最適なロボットの自動割当を行うことで、配送の効率化を一層推進します。
また、楽天は自動配送ロボット10台体制によるサービス提供の実証実験も実施しており、これは経済産業省の令和5年度補正予算「物流効率化に向けた先進的な実証事業」における補助を受けて行われました。これにより、今後のさらなる需要拡大に備えた、より強固な配送体制の構築が進められています。
楽天の執行役員 インキュベーション事業 ヴァイスプレジデントである向井 秀明氏も、「日本の配送業界では人手不足が深刻化しており、無人の配送ソリューションに対する需要が高まっています。『楽天無人配送』もサービス開始から多くのお客様にご利用いただいており、今後のさらなるサービス拡充に向けて、Avrideと協業できることを嬉しく思います」とコメントしており、この取り組みが日本のEC物流課題に対する重要な解決策であることを強調しています。

物流AIが描く未来図

「楽天無人配送」の進化は、単なる利便性の向上に留まりません。AIが最適なルートとロボットを割り当てることで、配送の効率化とコスト削減に貢献します。そして何より、人手を介さない配送は、EC物流業界の慢性的な労働力不足を補う画期的なソリューションとなり得るでしょう。先進的な自動運転技術と厳格な安全基準への適合は、サービスへの信頼性と安心感を高める重要な要素です。
楽天は今後も、自動配送ロボットによる安心・安全で利便性の高いサービスを、より多くの方が活用できるよう、サービスの拡充を継続的に行っていくとしています。 「楽天無人配送」は、日本の物流が抱える課題に対し、AIとロボット技術がどのように貢献し、私たちの生活を豊かにできるかを示す、まさに未来を拓く先進的な事例と言えるでしょう。

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