商船三井/自動車船でカーボンオフセット航海を実施 グリーン物流(環境) 2023.06.17 自動車船でカーボンオフセット航海を実施~欧州向け完成車海上輸送時のCO2排出量を相殺~ 2022年06月15日 株式会社商船三井(社長:橋本剛、本社:東京都港区、以下「商船三井」)は、ボランタリーカーボンクレジット(註1、以下「カーボンクレジット」)を活用し、日本から欧州向けの完成車海上輸送に於いて、カーボンオフセット航海を実施しました。今回の取り組みは、現在の技術レベルでは削減が困難な二酸化炭素(CO2)排出量に対するカーボンクレジットの活用について、海運における具体的な利活用を検討するためのパイロットケースとして実施したものです。 商船三井が運航する「BELUGA ACE(ベルーガ・エース)」は、マツダ株式会社(社長:丸本明、本社:広島県安芸郡、以下「マツダ」)の完成車を船積みし、4月18日に広島港を出港、5月28日に英国・Bristol港にて航海を完了しました。同船が日本~欧州間の航海で排出したCO2量は燃料油の製造から本船で消費するまでの全過程を含めて約4,000トンで、同数値の算出方法は第三者検証機関であるBureau Veritasに拠って適切に検証されています。また、検証の工程を含むCO2排出量の算出からカーボンクレジットによる全量オフセットに至るまでの全体プロセスも、第三者認証機関のClimate Neutral Commodity社(註2)による認証を受けています。 BELUGA ACE広島寄港時の荷役風景と、船積みされたマツダ製完成車 今回の取り組みでは、ガーナおよび中国における植林・再植林プロジェクトから創出されたカーボンクレジットを活用しました(註3)。いずれのプロジェクトも国際的なカーボンクレジット基準管理団体Verra(註4)の認証を受け、過去5年以内に創出されたクレジットです。加えて、これらのプロジェクトは大気中からCO2を吸収・除去するだけでなく(註5)、生物多様性の保全や地域住民の雇用創出といった複数の相乗便益に貢献しています。 ガーナの再植林(写真左)、および中国の植林(写真右)プロジェクトの様子 商船三井グループは、2021年6月に発表した「商船三井グループ 環境ビジョン2.1」で、2050年までにネットゼロ・エミッションを達成することを目標としています。ゼロエミッション燃料の研究開発、低炭素船への船舶更新といった最大限の排出量削減努力に加え、多様なステークホルダーとの共創を通じて、カーボンクレジットの利活用や、自然および技術ベースのネガティブ・エミッションの創出にも取り組み、ネットゼロ・エミッションを実現していきます。 【商船三井グループが設定した5つのサステナビリティ課題】商船三井グループでは、事業を通じて優先的に取り組むべき社会課題として特定した「サステナビリティ課題」への対応を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献します。本件は、5つのサステナビリティ課題の中でも特に「Environment 海洋・地球環境の保全」「Human & Community 人の活躍と地域社会の発展」にあたる取り組みです。 (註1) ボランタリーカーボンクレジット炭素の価格付けの一つの手法であるカーボンクレジットは、国連・政府が主導し運営される制度と、民間セクターが主導し運営される仕組みが存在する。後者は規制や政策に関わらず、民間セクターが自主的にクレジットを発行・活用する性質を持つことから「ボランタリークレジット」と呼ばれる。 (註2) Climate Neutral Commodity社スイス ジュネーブに本社を置き、企業によるカーボンクレジット活用の透明性を担保するため、CO2排出量の算出やカーボンクレジットの償却といった一連のプロセスが、GHG Protocol、ISO14064などの国際標準に適合していることを認証するサービスを提供する。HP URL:https://www.climateneutralcommodity.com/ (註3) 今回活用したカーボンクレジット プロジェクト名 ①Reforestation of degraded forest reserves ②Qianbei Afforestation Project 国・地域 ガーナ アシャンティ州 中国 貴州省遵義市 クレジット数量 2,082 tCO2e 2,081 tCO2e クレジット創出年 2018-2019年 2018年 クレジットタイプ 炭素吸収・除去 (註5) 炭素吸収・除去(註5) 認証プログラム VCS VCS 概要 荒廃した森林の再生を目的とし、チークや在来種を用いた持続可能な植林、水辺の緩衝地帯における天然林の再生、違法伐採の防止を行う。間作プログラムと再植林を通じた雇用創出に加え、森林回復による生物多様性の増加や、土壌と水質の改善にも貢献している。 成熟期の長い在来樹種を植えることにより、炭素隔離を改善し劣化した土地での生物多様性を高めるプロジェクト。地域コミュニティへの植林・森林管理・保全技術の継承を通じ、雇用も創出している。新たな森林生態系の構築と減少防止、土壌・水の保全の改善を通じて、生物多様性の回復も目指している。 (註4) Verra米国ワシントンDCに本社を置き、世界で最も広く使用されている「Verified Carbon Standard(VCS)」を管理・認証する、国際的なカーボンクレジット基準管理団体。 (註5) カーボンクレジットの分類カーボンクレジットは、プロジェクト未実施の場合の排出量の想定ベースラインと比較して、プロジェクト実施に伴ってGHG 排出量が減少する排出・回避由来のものと、ベースラインに対しGHG 吸収・除去量が増加する炭素吸収・炭素除去由来のものに2分される。