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富士フイルム/米国テキサス拠点の新生産棟を稼働

SCM・製造拠点 2023.06.17

バイオ医薬品の開発・製造受託事業をさらに拡大

米国テキサス拠点の新生産棟を稼働

2018年1月18日

富士フイルム株式会社

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、バイオ医薬品(*1)の開発・製造受託事業をさらに拡大するため、バイオ医薬品のCDMO(*2)拠点の1つである米国テキサス拠点に新たに建設した生産棟を1月17日(米国現地時間)より稼働させました。この生産棟では、需要が拡大している抗体医薬品の製造を行います。

富士フイルムは、動物細胞や微生物を利用してバイオ医薬品に使われるタンパク質を効率的に産生する高度なバイオテクノロジーや、培養から抽出、精製にいたるプロセスの管理ノウハウなどを持つFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下FDB)を中核に、医薬品の開発・製造受託事業の拡大を進めています。また、写真フィルムで培った一定条件製造技術や品質管理技術をFDBに投入することで生産効率を大幅に向上させるなど、さらなる事業成長に向けて取り組んでいます。

現在、FDBは、生産プロセスの開発から治験薬さらには医薬品の商業生産までの一連のワークフローを一体的・効率的に進めることができる、抗体医薬品向けの開発・生産プラットフォーム「Saturn mAb(サターンマブ)プラットフォーム™」(*3)を活用した開発・製造受託サービスに注力しています。このような中、米国テキサス拠点に、本サービスを提供する上で重要な役割を担う、cGMP(*4)に対応した新生産棟を完成させ、稼働開始に向けて準備を進めてきました。

今回稼働させた新生産棟は、ニーズが高まっている多品種生産に適した2,000リットルの培養タンクを最大12基まで設置できるスペースを有しています。さらに、富士フイルムの一定条件製造技術や品質管理技術、FDBが持つ業界最高水準を誇る高生産性細胞作製技術「Apollo™」(*5)とを組み合わせることにより、高効率生産を実現し大量生産にも対応。顧客が求める高品質な抗体医薬品の提供を可能にします。

すでにFDBは、新生産棟に機動性に優れるシングルユース仕様(*6)の動物細胞培養タンクを2基導入し、運転を開始しています。今後、米国テキサス拠点と、2017年9月に英国拠点に増設した生産プロセスの開発拠点を緊密に連携させ、「Saturn mAbプラットフォーム™」を活用した開発・製造受託サービスを強力に推進していきます。さらに、本サービスをより一層拡大させるため、米国テキサス拠点では2,000リットル動物細胞培養タンク4基の追加導入を、英国拠点では生産プロセスの開発拠点の拡張を進めています。

また、英国の生産プロセス開発拠点では、多様化する顧客ニーズに対応するため、抗体医薬品の生産に必要な動物細胞株(*7)を作製するための設備を増強します。「Apollo™」を用いて顧客ニーズにマッチした動物細胞株を作製することにより、「Saturn mAbプラットフォーム™」を活用した開発・製造受託サービスを拡充。さらには抗体医薬品の生産プロセス開発、商業生産まで繋げることで、本サービスの売上拡大を図っていきます。

なお、米国現地時間の1月17日に米国テキサス州カレッジステーション市にて、テキサス州経済開発観光局長のブライアン・ダニエル氏など出席のもと、新生産棟稼働のオープニングセレモニーを行いました。

バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく高い効能が期待できることから、医薬品市場に占めるバイオ医薬品の割合は高まっており、なかでも抗体医薬品の市場は大きく伸長しています。バイオ医薬品の生産には、高度な生産技術と設備が必要であるため、製薬企業やバイオベンチャーなどが優れた技術と設備を有するCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増しています。これに伴い、バイオ医薬品の開発・製造受託市場は年率8%(*8)の成長が見込まれています。

今後、富士フイルムは、2017年3月に新設したバイオCDMO事業の下、積極的な設備投資や高効率・高生産性の技術開発など成長戦略を進め、2023年度にはバイオCDMO事業で1,000億円の売上を目指すとともに、高品質な医薬品の安定供給を通じて、医薬品産業のさらなる発展に貢献していきます。

*1 低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品。ワクチンのほかに、インスリン、成長ホルモン、抗体医薬品などを含む。抗体医薬品とは、生体内で病原菌やがん細胞などの異常な細胞を認識して生体を保護する免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品で、抗体が特定の標的(抗原)と結合することで治療効果を発揮する。抗体の製造には、動物細胞が用いられる。

*2 Contract Development & Manufacturing Organizationの略で、生産プロセスの開発受託および製造受託を行う会社・組織を指す。薬剤開発初期の細胞株開発からプロセス開発、安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造までの幅広いサービスを製薬企業などに提供する。

*3 抗体医薬品の高効率な生産ワークフローを実現するFDB独自の技術基盤のこと。具体的には、培養条件などの生産プロセスの開発から、本プロセスの治験薬・医薬品生産への適用、さらに商業生産までの工程を一体として設計し、高品質な抗体医薬品の高効率生産を可能とするもの。

*4 current Good Manufacturing Practiceの略。米国FDA(食品医薬品局)が定めた医薬品および医薬部外品の最新の製造管理および品質管理規則のこと。

*5 バイオ医薬品の量産に適した高い生産性の動物細胞株を高効率に作成する技術。(1)使用実績豊富で安全性の高い細胞の選択、(2)独自開発したベクター(目的の遺伝子を細胞に導入するための分子)を用いた遺伝子組み換え技術、(3)性能の良い細胞株を迅速にスクリーニングする技術、(4)動物由来成分を含まないため安全性が高く、かつ細胞培養特性に優れた培地の開発、の4つを組み合わせた独自の技術。

*6 培養タンクの内側にプラスチック製のバッグを用いる仕様。バッグを交換することで洗浄・滅菌の工程が省かれ、異物の混入などのリスクも低減できるなどのメリットがある。

*7 長期にわたって、性質が変化することなく、増殖することのできる動物細胞の種類。抗体医薬品などの製造に広く用いられるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が一例で、遺伝子組み換えの結果、長期間に渡って安定的に増殖し、タンパク質を産生することができる。

*8 富士フイルム調べ。

【「Saturn mAbプラットフォーム」の設備投資の概要】

  米国テキサス拠点 英国拠点
会社名 FUJIFILM Diosynth Biotechnologies Texas, LLC FUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK Limited
所在地 College Station, TX, US Billingham およびRedcar, UK
目的 抗体医薬品の生産能力増強 抗体医薬品の生産用細胞の作製、および生産プロセス開発の能力増強
内容 生産棟
シングルユース仕様の動物細胞培養タンク(2,000リットル×6基)など
医薬品の成分などを高速で自動分析できる最先端機器や培養・精製の小スケール実験が全自動で行える最新鋭設備など。
稼働開始時期 2,000リットル×2基(2018年1月)
2,000リットル×4基(2018年秋~2019夏)
930平方メートル(2017年9月)
約900平方メートル(2018年秋)

下線部:今回稼働の生産設備


【FUJIFILM Diosynth Biotechnologies概要】

会社名 FUJIFILM Diosynth Biotechnologies UK Limited FUJIFILM Diosynth Biotechnologies U.S.A. Inc. FUJIFILM Diosynth Biotechnologies Texas, LLC
本社 Billingham, UK Morrisville, NC, US College Station, TX, US
CEO Steve Bagshaw Steve Bagshaw Steve Bagshaw
株主構成 富士フイルム(80%)
三菱商事(20%)
富士フイルム(80%)
三菱商事(20%)
FUJIFILM Diosynth Biotechnologies U.S.A. Inc.:100%
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