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東京都/豊洲へ市場を移転、築地市場も再整備し一部活用へ

物流不動産・施設 2023.06.17

築地市場移転問題について

【知事】本日、急なお声がけでございましたが、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。市場移転問題につきまして、本日、ご報告がございますので、私の方から冒頭発言させていただきます。
まず、私は、築地市場の再開発を含みます市場の新たなプランについて、都の職員の方にまとめるように指示をいたしたところでございます。
理由は2つございまして、まず1つ、豊洲市場、これまで約6000億かけて作られてきたわけでございますが、豊洲ありきで移転後の計画が不十分ではなかったか。そして、これまでの都政において、築地市場を売却して費用の穴埋めをするという計画はありましたけれども、移転後に毎年生じる年間100億円近い赤字にどう対応していくのか。そして、やがて豊洲が老朽化して、先の話でありますけれども、更新するときの費用をどうするのかといったような点は、まだよく吟味されてなかったように思います。いわば、今を生きる人たちを見ているものの、累積する赤字という負の遺産に向き合うことに将来なってしまう。子供や孫たちへの将来の責任、後世のツケに真正面から応えられるような計画がなかったのではないかと考えるからであります。
これまで、石原都知事が豊洲移転を決定されてから、行政からも議会からも、このようにロングタームの明確な計画は聞こえてこなかったように思います。ご承知のように、昨年の11月に設定をいたしましたロードマップに従って、一つ一つ行政手続きをこれまで踏んでまいりました。そして、先だって、市場のあり方戦略本部を開きまして、そしてさまざまな選択肢、今後の青写真というのが出てきたところでございます。当初は豊洲市場に移転をして、そして市場の、築地市場の跡地を売却、清算をする案ということでございましたが、今回のあり方戦略本部では、A、B、C、D、いろいろな案が出されたわけでございます。まさしく、これまでになく、戦略的な市場のあり方、その総点検をしたお蔭ではないかと考えるところでございます。
築地市場の売却でございますけれども、確かに一時的にはどっとお金が入ってくるということでございますけれども、一昔前のように、箱ものを作ったら終わり、あとは知らないというような、将来世代へのツケを残してよいものかどうなのか。私はいけないと思います。そしてまた、これまでのようなタコ足経営に終止符を打って、むしろ東京の戦略的・総合的な発展を必死に考えて実行していく最後のチャンスになると考えたからでございます。
それから2点目でございますけれども、これまで日本一の世界に誇るブランド、築地のブランドというものは、長い間、汗水流して、必死の思いで育て、そして守ってきた市場の方々に対して、真に向き合っていく必要があると感じたからでございます。
ご存じのように、石原都知事時代に土壌汚染の可能性が指摘された東京ガスの跡地に建てました豊洲への移転については、環境基準以下に有害物質を抑えるという約束、いわゆる「無害化」を念頭にしてきたわけでございます。都議会においても、無害化を前提とする付帯決議も存在をしてきました。
一方で、その土壌対策、汚染対策でございますが、これまで850億円以上も投じられてまいりましたけれども、今年1月から、モニタリング調査でも、いまだに有害物質が基準値を大幅に上回る数値、検出をされました。よって、現在においても無害化の約束が果たされているとは言えない状況でございます。
逆に、昨年の11月に予定通り豊洲が開場された後に、あるはずの盛り土がなかった、さらにモニタリングで有害物質が検出されていたということがわかっていたならば、既に売却された築地を失い、そして行き場を失くしてしまっていた。市場関係者の皆様、「一体どうしたらよいのか」と思ったのではないかと思うわけでございます。
その上で、先の専門家会議でございますが、安全性を検証していただいてきました平田座長が、「地上は安全だ」と、「しかしながら、有害物質が検出された地下については追加対策が必要」とのご意見を出されたところはご存じのとおりであります。改めて専門家会議が再度検証してきた、これが答えということでございました。

 先日、築地市場に、私、赴きまして、市場関係者の方々から率直なご意見も伺ってきたところでございます。「私は築地が大好きなんだ」、「この際、時間をかけても、しっかりとしたものを決めてほしい」など、築地市場の方々の切実なお声を伺ってきたところでございます。
我が国は伝統文化というものを大切にしてきた国でございます。長い間、築地市場の方々、東京都民ならず、日本が育てて守ってきた築地の伝統やブランド、私はこれらを守っていくのだという、その信念と、豊洲で累積してしまう赤字という将来の負の遺産は残してはならないという、次の世代への思いと、これから日本一の世界に誇る築地ブランドからの食に魂を込めまして、この築地を再開発するという基本方針を判断するに至ったところでございます。
築地市場の跡地を再開発するということにも、もちろん課題は山積しております。しかし、老朽化した今の築地市場で、今後30年以内に高い確率で発生すると予想されます首都直下型地震への対応も睨まなければなりません。長い間、育まれてきた築地ブランド、今後50年、60年、70年と、さらに育てていくために、応急手当てではなく、ここはしっかりとした手を打っていくべきではないかと考えるところでございます。
もちろん、最終的に決定をする権限を持つのは都議会ということになりますが、築地を再開発して、新たな東京の一大拠点をつくるという希望があれば、私は必ずやっていけるもの、実現できるものと考えているところでございます。
それでは、パワーポイントで、若干、内容をご説明していきたいと存じます。
市場移転の問題に関してまとめてみました。まず、豊洲市場の状況と課題を確認しておきます。
安全・安心の基準につきましては、先ほど申し上げましたように、これまでの議会の付帯決議、そしてまた市場長答弁などがございますが、未達成ということで、先日、私、築地市場の講堂に参りまして、皆様方に謝ってきたところでございます。今後もこの事業者と都民の皆様方からの信頼を得るためには、最大限の努力が必要だということを痛感したところでございます。
次に、豊洲市場開場後の健全な経営の計画を確保していかなければなりません。これまで都民全体の財産であります築地市場を売却して、資金を充当をするという考え方があったわけでございますが、一方で、豊洲市場につきましても、開場後も赤字が嵩むということで、これは先日の市場のあり方戦略本部においても、この数字、見通しなどは示されたところでございます。また、キャッシュフロー赤字ということにつきましては、毎年21億円という数字がはじき出されたところでございます。そして、都民の財産の処分、そして、これから税金をどーんと投入するなどということがあってはならないということでございます。

次に、築地市場の状況を、もう一度、おさらいをしておきたいと思います。大変歴史ある築地市場でございますので、その結果として老朽化が進む、それから、耐震工事が、これは先ほど申し上げましたように、首都直下型地震にどこまで耐え得るのか、課題がございます。そしてまた、仮設建築物などの施設の改修が必要だということも指摘をされているところでございます。
それから、土壌汚染調査、これも現在も行っているところでございますけれども、必要な土壌汚染調査ということが求められると考えられます。
それから、築地市場でありますが、こちらの方もあり方戦略本部、さらには各関係者の皆様方からのヒアリングを通じても明確なように、取扱量、そして取扱金額、さらには仲卸の業者の数は、この25年間でほぼ半減という状況でございまして、物流が、このところ特に変化が激しいということでございまして、できるだけ早急な対策が必要と考えているところでございます。
そして、築地市場の、次でございますが、築地市場の状況をもう一度改めて見直してみますと、築地市場の価値、そして高いブランド力というのは、これは東京都の莫大な資産であると考えられます。高い知名度、そして長い歴史、日本で唯一市場がブランドになった希有な存在と言っていいかと思います。そして、その築地ブランドの核をなすのが仲卸の皆さんでありまして、この仲卸の方々の目利き力ということが、まさにブランドの宝の部分かと思います。
一方で、不動産というのは、一言で「ロケーション」と言われるわけでございますけれども、ロケーションについては、東京の中でもこの築地の位置というのは、何ものにも代えがたいものがあるわけでございます。その上、さらに市場内外一体とした食の賑わいがあるからこそ、世界からの観光客も引きつけているという現実もございます。さらには、それが観光資源としても大きな経済価値を有しているということでございます。
そこで、都といたしまして、築地ブランドを維持、活用、発展させるということで、新しい戦略を展開すべきと考えております。その上で、透明性の高い制度の運用改善も必要かと考えております。
これらをベースにいたしまして、基本的な方針でございますけれども、「築地は守る、豊洲を活かす」ということを基本方針の1とさせていただきます。「築地の後は築地」ということも言えるかと思います。築地市場は長年培ったブランド力、そして地域との調和を活かして改めて活用することが、この大切な宝を活かす方法ではないかと考えます。
そして豊洲、一方で豊洲市場の問題でありますけれども、地下空間の追加対策については、先日の専門家会議でもご示唆のあったところでございまして、また、地下水管理システムの補強策という点も先だっての専門家会議で指摘のあったところでございまして、これら安全対策を講じた上で豊洲市場を活かすべきではないかと考えます。
さらに、この豊洲市場でございますが、冷凍冷蔵・加工などの機能を今もこれをベースに作られたものでございますけれども、そこを一層強化をして、ITを活用するユビキタス社会の物流、総合物流拠点となる中央卸売市場になると考えております。
方針の3番目でございますけれども、改めて申し上げますと、東京都といたしまして、事業者の皆様、都民の皆様の信頼回復に徹底的に取り組んでいくということでございます。
これらの基本的な方針を基にいたしまして、早急に具体的な方策を詰めていくように事務方、都庁職員の方に先ほど指示をしたところでございます。
次でありますけれども、この方針の1の意味でありますけれども、先ほどからも繰り返して申し上げておりますように、そのブランド力、そしてまた、現状の維持、保存を超えて、伝統と革新が交錯する場所へと発展させることができる。それから、築地の土地を民間とともに有効活用して自立的な経営を目指す。場外と一体となって、世界の食の関連業者を集積をしていく。そして築地、アルファベットの「TSUKIJI」とすることによって、2020年以降の東京の世界への発信の重要な拠点になるということかと存じます。もちろん、このアルファベットにしたというのは、これで決めるということではなくて、ニュアンスとしてお伝えをしているところであります。
それから、移転をする理由でございますけれども、これはプロジェクトチームの方で、種地を転がして徐々に築地を再整備するという案を出していただいていたわけでございますけれども、施設の老朽化、そして耐震化への対応というのは急務でございますし、市場を取り巻く環境や仲卸など、事業者の経営状況もかなり厳しいものもございます。そこで、現地再整備案、つまり営業しながら改修をしていくローリング案というのは現実的にはかなり厳しいという中において、建て替えの有効な地として豊洲市場を活かしていくという考え方でございます。
そこで、新しい築地を創造していくということでございまして、この築地の土地を有効活用して、採算性も今後向上させていくという考え方であります。
築地市場の進化という点でありますけれども、卸売市場が変化をしている、取引は、せりからIT、相対取引が増加をしているという現実、そして、市場の役割や物流、加工機能が増加しているという点、これに築地のポテンシャルをかけていきますと、新たな築地の姿が見えてくるのではないかということでございます。
次に、豊洲市場でありますけれども、豊洲は羽田、そして成田に近いということでございます。そして、環状2号線の開通によりまして、さらにその利便性というのが向上するであろうと見込まれます。そして、その結果として、湾岸地域の物流センターとしても有利な立地であると考えられます。豊洲市場では、その市場機能、その中でも転配送機能、市場外流通機能を維持、発展させることによって、新たなビジネスチャンスも出てくると考えております。
それから、これはあまり知られていないことかもしれませんけれども、2020年からHCFCのフロン規制が始まり、強まりまして、各地の業務用冷凍冷蔵庫の更新需要が期待をされる時期に差し掛かります。そして、冷凍冷蔵庫を備えたセンターというのは、大きな可能性があるということでございます。
ちなみに、各地の業務用冷凍冷蔵庫でございますけれども、これはかなり年代物も多うございまして、その更新の時期とも、それからフロン規制とも重なってくるということで、グラフをご覧いただきたいと思います。
冷凍倉庫の需給ギャップの拡大ということが、この表からご覧いただけるかと存じます。そしてまた、大型物流施設の実質的な賃料は、特に東京湾岸エリアでは上昇しているということでございまして、中央卸売市場に加えて、このようなITを活用した新たな物流の拠点にもなり得るということでございます。
そこで次に、豊洲へのこれまでの過剰投資とも言うべき、この繰り返しを、築地市場のワンショットの売却で充当すべきではないと考えております。そこで、築地市場の土地は売却せずに保有して、むしろ有効活用することでキャッシュを継続的に創出できるのではないかと考えております。それから豊洲は将来的に物流機能を強化した中央卸売市場プラス物流センターとして効率経営に徹するということで、赤字の負担を軽減しつつ存続も可能にしていくという考え方でございます。よって、豊洲、そして築地。これらを両立させることが最も賢い使い道ではないか。そしてその鍵は、市場会計が独立採算制の本旨に立ち返って、そして規律のある築地再開発、そして豊洲活用による自立経営を目指すことにあるのではないかと考えております。次に簡単にグラフを示しておりますけれども、先だっての市場のあり方戦略本部の資料を基に、ざっくりと計算をしたものでございますけれども、豊洲に単に、A地点からB地点に移るということになりますと、これについてはキャッシュフロー赤字が継続をするということでございますので、それを打破するためにも、築地の再整備、そしてまた豊洲を上手く活用していくということを、機能を強化することによって収入を得るというダブルのプラスに持っていきたいと考えております。
そこで3番目でございますが、東京都の信頼回復のための行動につきましては、築地の再開発、そして豊洲市場を活用する具体案を事業者、そして都民の皆様方とのオープンな対話の場を設けまして、広く情報公開をしながら検討していきたいと考えております。是非、皆様方からいろいろなご意見などもお伺いをし、「こういうアイデアはどうか」なども募っていきたいと考えております。そして築地の再整備でございますけれども、豊洲への移転、築地への復帰ということ。これはそれぞれの方々が選択をされることになるかと思いますけれども、特に仲卸業者への経営支援については検討してまいりたいと考えます。それから築地市場のまちづくりにつきましては、場外市場の方、また、新規の参入の意向のある方など含めた行程表を作成したいと考えております。それから築地の用地でありますけれども、もちろん土壌汚染の調査、文化財調査などが必要になってくるかと思います。そしてまた、豊洲の移転に関しては、先ほど来、冒頭に申し上げましたように議会の付帯決議、市場長答弁等ございまして、それをベースにしてさまざまなこれまでの努力を重ねてきたわけでございますが、専門家会議で提言がされておる地下空間工事、それから地下水管理システムの増強工事、それからモニタリングなどなど、これらをしっかりとするということが必要かと思います。豊洲市場の安全性をしっかりと情報公開をすることによって、風評被害を払しょくしてまいりたいと思います。
そしてまた3番目の基本方針でございますが、東京都の信頼回復の行動として、まず豊洲移転後、豊洲市場の使い勝手の改善をしていく。それから、そのために習熟訓練、施設改修、使用ルールの整備などを行ってまいります。そして豊洲市場の経営を改善していくということでございまして、経営収支の改善を図ってまいります。そして環境の監視、モニタリングですね。地下水の管理、さらには付近の交通量の調査など行いながら安全安心の確保に努めてまいりたいと考えております。支援でございますが、業者の皆様方の経営相談を行って必要な支援策を講じてまいりたいと、このように考えております。
改めて、先ほどの3つの経営方針をまとめておきますと、築地市場につきましては、5年後を目途にして再開発をしていく。そして、環状二号線でございますが、オリンピック前に開通をさせます。そして、その後、築地市場の跡地は当面オリンピック用のデポ、輸送拠点として活用をいたします。その後、食のテーマパーク機能を有する新たな市場として、東京をけん引する一大拠点とするという考え方であります。それから二番目。豊洲中央卸市場でございますが、冷凍、冷蔵、物流、加工などの機能をさらに強化することによって、将来にわたる総合物流拠点にもなりうるという考え方でございます。それから築地の再開発と豊洲市場利用の具体案については、先ほども申し上げましたように、事業者、そして都民の皆様とのオープンな場を設けまして、広く情報公開をしながら検討してまいります。東京都は業者の皆様、都民の皆様からの信頼を回復するように、徹底的に努力をしてまいりたいと考えております。これらをまとめて、イメージでございますけれども、築地と豊洲、築地のブランド力と地域の魅力を一体化させた食のワンダーランドを作りたいと考えております。豊洲につきましては、ITを活用した総合物流センター機能ということも、中央卸売市場としての機能プラス総合物流センターにしていきたいと考えております。ちなみに築地でございますけれども、これはPTの案を持ってきた絵でありますけれども、これに特にこだわっているわけではございません。ポイントはむしろ、このお隣にある浜離宮がございまして、こちらとの一体的な活用をする。これまで折角お隣にこんな素晴らしい地がありながら有効に活用されていなかったのではないか。もちろん計画をするには年月がかかりますけれども、その中でどのようにこの築地のブランド力のある市場と、上手く活用していくかということについては、また地域の皆様方とも話をしながら進めていきたいと考えております。少々長くなりましたけれども、基本的な方針について、私の方からお話をさせていただきました。以上でございます。

(会見で使用したスライド資料は、こちらをご覧ください。)(PDF:639KB)

(略)

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