ヤマトホールディングス/売上高は前年比1・4%増、経常利益は前年比2・1%減(平成28年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)) 決算短信 2023.06.17 平成28年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 単位・百万円 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益 28年3月期 1,416,413 1.4 68,540 △0.6 69,426 △2.1 39,424 5.0 27年3月期 1,396,708 1.6 68,947 9.3 70,889 9.6 37,533 7.9 (注)包括利益 28年3月期 24,482百万円 (△47.1%) 27年3月期 46,243百万円 (17.9%) (略) (1)経営成績に関する分析 当連結会計年度における経済環境は、企業業績は高水準で推移したものの、新興国の景気減速や円高の進行などの 影響により、景況感は力強さを欠く状況となりました。個人消費においては、物価上昇への懸念が根強い中で実質所 得も伸び悩み、消費行動には依然として停滞感が残りました。労働需給に関しても逼迫した状態が継続し、引き続き 厳しい経営環境となりました。このような環境の中、ヤマトグループは長期経営計画「DAN-TOTSU経営計画 2019」および中期経営計画「DAN-TOTSU3か年計画 STEP」の達成に向けて、高品質で効率的な物 流ネットワークの構築、また、グループの経営資源の融合による高付加価値モデルの創出に取り組みました。 デリバリー事業においては、平成27年4月より販売を開始した新サービス「宅急便コンパクト」、「ネコポス」 を、通販事業者様へ拡販したことに加え、フリマサイトとの連携を進めたことにより、利用が拡大しました。全体と しては、新サービスを中心に宅急便の取扱数量が増加したことにより増収となりましたが、クロネコメール便廃止に よる影響をクロネコDM便や新サービスの伸長で補うには至らず、利益面では減益となりました。 ノンデリバリー事業においては、グループ各社の強みを活かした既存サービスの拡充に取り組むとともに、グルー プ横断的に連携してお客様の課題解決に当たるソリューション営業を積極的に推進しました。 (略) なお、当連結会計年度においては、自己株式を約500億円、1,984万株取得するとともに、保有する自己株式を 2,422万株消却しました。 <ヤマトグループ全体としての取組み> ① ヤマトグループは、各事業が一体となって付加価値の高い事業モデルを創出し、日本経済の成長戦略と、国際 競争力の強化に貢献する「バリュー・ネットワーキング」構想を推進しています。また、事業の創出・成長の 基盤となる健全な企業風土の醸成に取り組んでいます。 ② 「バリュー・ネットワーキング」構想の推進に向けては、ヤマトグループのネットワークを活かした高付加価 値モデルの創出に取り組んでいます。国内外のお客様の様々なニーズに対応するために、既存のラストワンマ イルネットワークに加え、「羽田クロノゲート」、「厚木ゲートウェイ」、「沖縄国際物流ハブ」といった革 新的なネットワーク基盤を、より効果的に活用しています。 ③ 健全な企業風土の醸成に向けては、引き続き輸送体制の整備やITによる業務量の見える化など、業務の効率 性・信頼性を向上させる施策を推進するとともに、改めて社員教育を徹底し、お客様との約束を守る体制の構 築に重点的に取り組みました。さらに、環境施策や安全施策、地域社会の活性化に向けた取組みなど、ヤマト グループの事業活動に結びついたCSR活動を積極的に推進しました。 ④ 今後も成長が見込まれる通販市場に対しては、グループの持つ機能をパッケージで提供する「YES!」(Yamato Ec Solutions)の拡販を積極的に進めました。また、沖縄グローバルロジスティクスセンター「サザンゲー ト」の稼働を開始し、越境通販などの海外向けビジネスを行う事業者様に対して、製造から保管、配送までを ワンストップで提供するソリューション営業を推進しました。 ⑤ 法人のお客様に向けては、全国4,000カ所の宅急便センターをビジネス拠点として活用できる「ヤマト クラウ ドデポ」の拡販を進めました。ヤマトグループの経営資源を活用することで、営業マンの生産性向上や、営業 所のバックオフィス業務の削減に貢献し、お客様のビジネスの成長を支援するソリューション営業を展開しま した。 ⑥ 海外市場に向けては、マレーシアの大手宅配事業者と業務・資本提携を実施するなど、東南アジアにおけるネ ットワークの構築を積極的に推進しました。また、香港、台湾に続き、当連結会計年度は新たにシンガポー ル、マレーシア向けに「国際クール宅急便」の販売を開始するなど、国際間におけるコールドチェーン展開を 進め、成長するアジア各国に付加価値を提供する国際物流の強化に取り組みました。 ⑦ 労働需給の逼迫などの外的なコスト環境の悪化に対しては、業務量に連動したコスト管理を徹底するととも に、生産性向上施策の推進など、コストリダクションへの取組みを積極的に行いました。 <事業フォーメーション別の概況> ○デリバリー事業 宅急便、クロネコDM便の取扱数量は以下のとおりです。 (略) ① デリバリー事業は、お客様にとって一番身近なインフラとなり、豊かな社会の実現に貢献するために、宅急便 を中心とした事業の展開に取り組んでいます。 ② 拡大する通販市場に対しては、小さな荷物をリーズナブルな料金で手軽に送ることができる「宅急便コンパク ト」、「ネコポス」の2つの新サービスを発売し、複数のフリマサイトとの連携を進めるなど、積極的な拡販 を行いました。前連結会計年度をもって廃止したクロネコメール便に代わる新たな投函サービスとしては、 「クロネコDM便」を発売し、法人のお客様が発送されるダイレクトメールなどの需要に対応しました。ま た、荷物を受け取るお客様の利便性向上に向け、大手コミュニケーションアプリと連携し、お届け予定日時の 事前通知や荷物問合せサービスなどをより手軽にご利用いただける環境を整備しました。さらに、フランスの 大手郵便関連機器製造事業者と共同で、オープン型宅配ロッカーインフラの構築、運用を行う合弁会社の設立 に向け基本合意いたしました。 ③ 法人のお客様については、現場のネットワークを活かしてお客様の情報を吸い上げ、お客様の経営目標に沿っ たソリューション提案を積極的に推進しました。グループの経営資源を活用した付加価値の高い提案を行い、 収益性の向上に取り組みました。また、安定的な輸送品質の提供に向けた適正料金収受施策を推進し、継続的 に取り組んでいます。 ④ 地域活性化に向けた事業としては、複数の自治体や企業と連携し、買い物困難者の支援、高齢者見守りなど、 住民へのサービスの向上に取り組みました。また、農水産物をはじめとする生鮮品を鮮度を保ったままスピー ディーにアジア圏へ配送することで、地域産品の販売拡大を支援するなど、地元産業の活性化につながる取組 みを推進しました。 ⑤ 営業収益は、大手通販事業者様を中心に宅急便の取扱数量が増加し1兆1,118億67百万円となり、前連結会計 年度に比べ0.8%増加しました。利益面では、新サービスの取扱いが伸長したものの、クロネコメール便廃止 による影響を補うには至らず381億90百万円となり、前連結会計年度に比べ3.6%減少しました。 ○BIZ-ロジ事業 ① BIZ-ロジ事業は、宅急便ネットワークをはじめとした経営資源に、ロジスティクス機能、メンテナンス・ リコール対応機能、医療機器の洗浄機能、国際輸送機能などを組み合わせることにより、お客様に革新的な物 流システムを提供しています。 ② 通販業界に向けたサービスとしては、お客様のご要望に応じて、受発注処理から在庫の可視化、スピード出荷 などの多様な物流支援サービスをワンストップで提供しています。当連結会計年度においては、新規のお客様 の獲得が進んだことなどにより、取扱いが拡大しました。 ③ メンテナンス・リコールサービスとしては、故障製品の回収・修理・返送機能を一貫して提供するサービス や、企業のリコール対応をトータルでサポートするサービスを展開しています。当連結会計年度においては、 大手通販・家電事業者様を中心に「クロネコ延長保証サービス」の利用が拡大したことなどにより、収益が堅 調に推移しました。 ④ メディカル事業者様に向けたサービスとしては、医療機器のローナー支援(保管・洗浄・配送)をはじめとす る、物流改革の支援サービスを展開しています。当連結会計年度においては、既存のお客様を中心に取扱いが 順調に拡大し、収益を伸長させました。 ⑤ 営業収益は、通販関連や医療機器関連などのサービスが好調であったことなどにより1,068億22百万円とな り、前連結会計年度に比べ2.9%増加しました。営業利益は49億5百万円となり、前連結会計年度に比べ4.8% 増加しました。 ○ホームコンビニエンス事業 ① ホームコンビニエンス事業は、お客様の便利で快適な生活の実現に向けて、ヤマトグループの全国ネットワー クを活用し、生涯生活支援事業や法人活動支援事業に取り組んでいます。 ② 個人のお客様に向けては、大型家具・家電の配送サービス「らくらく家財宅急便」や引越関連サービスなど、 日々の生活を支援するサービスを展開しています。当連結会計年度においては、お部屋の清掃や整理収納、不 用品の買取りなど日常のお困りごとを解消する「快適生活サポートサービス」に新たに白物家電洗浄などのメ ニューを追加するなど、拡販を積極的に進め、着実に利用が広がりました。 ③ 法人のお客様に向けては、ヤマトグループと工事会社のネットワークを融合し、住宅設備などの配送・設置か ら工事・保守までをワンストップで提供する「テクニカルネットワーク事業」や、オフィス関連サービス、物 品の調達サービスなどの事業支援サービスを展開しています。当連結会計年度においては、オフィス関連サー ビスの利用が好調に推移したことなどにより、収益を伸長させました。 ④ 営業収益は、オフィス関連サービスや、物品の調達サービスの利用が好調に推移したことなどにより489億81 百万円となり、前連結会計年度に比べ1.0%増加しました。利益面では、平日稼働率の向上などに取り組んだ 結果11億46百万円となり、前連結会計年度に比べ87.0%増加しました。 ○e-ビジネス事業 ① e-ビジネス事業は、お客様の業務プロセスの効率化や潜在的な課題の解決に向けて、情報機能に物流機能、 決済機能を融合させたソリューションプラットフォームビジネスを積極的に行っています。また、グループの 事業成長を加速させるため、従来のITにとどまらず、AIやIoTなどを用いた新技術の活用を推進しておりま す。 ② 商品の受注・出荷業務を支援するサービスとしては、出荷情報の処理や伝票印字、荷物追跡などの業務を包括 的にサポートする「Web出荷コントロールサービス」を提供しています。当連結会計年度においては、通販市 場の成長などを背景に、既存大口のお客様を中心にサービスのご利用が拡大しました。 ③ 通信機器事業者様など、製品の個体管理を必要とするお客様に向けては、シリアル入出庫管理、在庫管理など の情報機能に、製品へのデータの落し込みや一部加工などのサービスを合わせて提供する「セットアップ・ロ ジソリューション事業」を展開しています。当連結会計年度においては、通信機器事業に新規参入したお客様 を中心にご利用が好調に推移しました。 ④ 電子マネー関連サービスにおいては、フィナンシャル事業と連携し、複数ブランドの電子マネーが1台で決済 できる「マルチ電子マネー決済端末」の設置・運用サービスを行っております。当連結会計年度においては、 アミューズメント業界に向けた電子マネー決済システムの拡販が進み、収益を伸長させました。 ⑤ 営業収益は、電子マネー決済システムの拡販が進んだことに加え、「セットアップ・ロジソリューション事 業」における取扱いが拡大したことなどにより433億57百万円となり、前連結会計年度に比べ7.1%増加しまし た。営業利益は、引き続きシステム開発に係るコストコントロールを進めたことなどにより90億9百万円とな り、前連結会計年度に比べ16.1%増加しました。 ○フィナンシャル事業 ① フィナンシャル事業は、通販商品の代金回収、企業間の決済、および車両のリースなど、お客様の様々なニー ズにお応えする決済・金融サービスを展開しています 。 ② 決済サービスに関しては、主力商品である「宅急便コレクト」の提供に加えて、ネット総合決済サービス 「クロネコwebコレクト」や、電子マネー決済機能の利用拡大を推進しています。当連結会計年度において は、「宅急便コレクト」をご利用のお客様に対し、「クロネコwebコレクト」、「クロネコ代金後払いサービ ス」のご利用を促進し、お客様に幅広い決済サービスを提供するとともに、収益性の向上に取り組みました。 また、電子マネー関連サービスについては、引き続き「マルチ電子マネー決済端末」のレンタルサービスの拡 販に取り組みました。 ③ リース事業では、トラックを中心としたファイナンスリースに加え、期間満了後の買取り、再利用に繋げる中 古車リースなど、グループのネットワークと車両に関するトータルソリューション提案を推進し、収益を伸長 させました。 ④ 営業収益は、通販事業者様向けの決済サービスが拡大したことや、リース事業におけるトラックリースの契約 増加などにより724億55百万円となり、前連結会計年度に比べ8.7%増加しました。利益面では、主力の「宅急 便コレクト」の取扱いが伸び悩んだことなどにより86億85百万円となり、前連結会計年度に比べ2.9%減少し ました。 ○オートワークス事業 ① オートワークス事業は、物流・流通事業者様へ「車両整備における利便性の向上」、「整備費用の削減」とい う価値を中心に「24時間365日営業・お客様の稼働を止めないサービス」を展開しています。さらに、「物流 施設、設備機器の維持保全や職場環境改善」や、これらの資産を対象に「お客様のリスクマネジメントに繋が る最適な保険提案」という機能を付加することで、お客様の事業運営に係るワンストップサービスを実現して います。 ② 当連結会計年度においては、新たな拠点として神戸工場の営業を開始し、さらなるネットワーク強化を行うと ともに、お客様の物流施設・設備の管理業務をサポートする「物流ファシリティマネジメントサービス」を新 たに発売するなど、サービス品質の向上に取り組みました。また、定期的にお客様のもとへ訪問する「リペア ワークス」の営業を積極的に行いました。 ③ 営業収益は、燃料販売単価の下落などにより244億58百万円となり、前連結会計年度に比べ9.9%減少しまし た。営業利益は33億72百万円となり、前連結会計年度に比べ9.7%減少しました。 ○その他 ① 「JITBOXチャーター便」は、複数の企業グループのネットワークを用いたボックス輸送を通じて、お客 様に「適時納品」や「多頻度適量納品」という付加価値を提供しています。当連結会計年度においては、運賃 決済に関する新たなサービスを展開するなど、お客様の利便性向上に取り組んだことに加え、既存のサービス が好調であったことにより、着実にご利用が拡大しました。 ② その他の営業利益は、ヤマトホールディングス株式会社がグループ各社から受け取る配当金などを除いて21億 7百万円となり、前連結会計年度に比べ84.1%増加しました。 <CSRの取組み> ① ヤマトグループは、人命の尊重を最優先とし、安全に対する様々な取組みを実施しています。海外の宅急便事 業会社を含めたグループ横断的な安全運動である「事故ゼロ運動」を実施するとともに、「ヤマト運輸全国安 全大会」を開催し、プロドライバーとしての安全運転のレベルアップと、全社の安全意識や運転技術の向上に 取り組みました。また、子どもたちに交通安全の大切さを伝える「こども交通安全教室」を平成10年より継続 して全国の保育所・幼稚園・小学校などで開催しており、累計参加人数は280万人を超えました。 ② ヤマトグループは、環境保護活動を「ネコロジー」と総称し、環境に優しい物流の仕組みづくりに取り組んで います。当連結会計年度においては、「第13回 モーダルシフト取り組み優良事業者公表・表彰制度」にて、 九州発関東行き荷物の鉄道を利用したモーダルシフト拡大の取組みが評価され、「モーダルシフト最優良事業 者賞(大賞)」を受賞しました。また、次世代を担う子どもたちへの環境教育をサポートする「クロネコヤマ ト環境教室」を平成17年より継続して全国各地で開催しており、累計参加人数は約22万人となりました。 ③ ヤマトグループは、社会とともに持続的に発展する企業を目指し、ヤマト福祉財団を中心に、障がい者が自主 的に働く喜びを実感できる社会の実現に向けて様々な活動を行っています。具体的には、パンの製造・販売を 営むスワンベーカリーにおける積極的な雇用や、クロネコDM便の委託配達を通じた働く場の提供、就労に必 要な技術や知識の訓練を行う就労支援施設の運営など、障がい者の経済的な自立支援を継続的に行っていま す。 ④ ヤマトグループは、より持続的な社会的価値の創造に向けて、社会と価値を共有するCSV(クリエーティン グ・シェアード・バリュー=共有価値の創造)という概念に基づいた取組みを推進しています。当連結会計年 度においては、路線バス会社が宅急便を一部区間輸送する「客貨混載」を開始するなど、地域住民への生活サ ービスの向上や地元産業の活性化につながる取組みを推進しました。また、高齢者見守り支援や地域活性化支 援など、引き続きヤマトグループの持つ経営資源を活用した多様なサービスの展開に取り組み、行政と連携し た案件数の累計は1,459件となりました。 <次期の見通し> 今後の経済情勢につきましては、企業業績や雇用情勢の改善に伴い、国内景気は緩やかな回復に向かうことが期待 されます。一方で、金融資本市場の変動による影響や海外経済の下振れ懸念等、依然として先行き不透明な状況は続 くものと予想されます。 このような状況の中、ヤマトグループは、デリバリー事業におきましては、荷物を受け取るお客様の利便性を高め るとともに、引き続き安定的な輸送品質の提供に向けた適正料金収受施策に取り組んでまいります。ノンデリバリー 事業におきましては、ソリューション営業を強化し、グループの経営資源を活用した高付加価値モデルを展開してま いります。 費用面では、業務量に応じたコスト管理に引き続き取り組んでまいります。一方で、国債利回り低下の影響等によ る退職給付債務の増加、および、税制改正による外形標準課税の拡大などから、営業費用が増加します。 通期の連結業績予想は、営業収益1兆4,600億円、営業利益640億円、経常利益645億円、親会社株主に帰属する当 期純利益385億円を見込んでおります。 (略)