富士通/ベトナム、ハナム省でICTを活用した農業実証事業開始 物流システム 2023.06.17 ベトナム、ハナム省でICTを活用した農業実証事業開始 ベトナム農業の発展・活性化のために日本のICT技術活用を提言 富士通株式会社(以下、富士通、注1)とFujitsu Vietnam Ltd.(以下、富士通ベトナム、注2)、およびイオンアグリ創造株式会社(以下、イオンアグリ創造、注3)は、独立行政法人国際協力機構ベトナム事務所(以下、JICAベトナム事務所、注4)様の支援を受け、ベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム) ハナム省で、ICTにより、農作業履歴、生育状況、栽培環境情報を収集して活用する日本式農業の有効性を評価する実証事業を2015年10月に開始し、2016年1月19日からは、ハノイ市で、ベトナム政府女性連合の調査員がスマートフォンアプリを利用して報告する農作物の市場価格情報を集約する実証事業も開始します。 これらの事業では、2015年1月から1年間、富士通と富士通ベトナムがJICAベトナム事務所の支援を受け、ベトナム フエ省で行った住民参加型防災システムの有効性評価での実績とノウハウを活用し、ベトナムで導入しやすいスマートフォンを利用して農作業履歴や市場価格などの情報を収集し、富士通のデータセンターで集約・可視化して提供します。イオンアグリ創造は、収集したデータを活用し、農作業を指導します。 2016年3月まで、これらの実証事業を通じてベトナム農業に有効な技術や手法を分析しJICAベトナム事務所と共に、ベトナムにおける安全性の高い農作物の生産性向上と安定供給を実現するフードバリューチェーンの実現に貢献していきます。 背景 ベトナムでは、生計向上および農業6次産業化に向けた課題解決として、農作物の安全性と生産性の向上を実現するフードバリューチェーン構築が急務となっています。JICAベトナム事務所は、ベトナム農業の活性化と発展のために日本の農業分野でのICT技術の活用を提言し、本事業を立ち上げました。 調査概要 実施期間 2015年10月~2016年 3月 実施場所 農業実証…ハナム省フーリー市から本実証用に提供される 農場 約10アール(1000平方メートル)市場価格情報調査…ハノイ市内 目的 (1) 農作業履歴、生育状況、栽培環境情報収集の実現性調査(2) 収集したデータ活用の有効性調査(3) ベトナムにおける、日本式農業を実践できる人材育成の実現性調査(4) スーパーマーケットや市場における市場価格情報収集の実現性、および有効性調査 役割分担 (1) 富士通、富士通ベトナム 株式会社富士通ミッションクリティカルシステムズ(注5)と共にプロジェクト全体を推進し、農作業履歴、生育状況、栽培環境情報のデータ収集・分析・活用のためのスマートフォンアプリを含めたICT環境を提供し、実現性と有効性を評価します。 a. スマートフォン 18台b. 農作業情報収集スマートフォンアプリc. 市場価格情報収集スマートフォンアプリ d. 農作業履歴記録用RFIDe. データ収集および蓄積を行う情報集約基盤(富士通データセンター内クラウドサーバ)f. ネットワーク環境g. 収集データ表示および取得用WEBサイトh. 農場内の気象センサー、土壌センサー (2) イオンアグリ創造 安全・安心かつ高品質な作物栽培を目的とした日本式農業を指導します。現地で施肥手法やGLOBAL G.A.P.(注6)などの講習会を実施するほか、インターネット経由で農作業履歴、生育状況、栽培環境などのデータを農作業者と共有しながら、日本から電話やメールで、農作業のリモート指導も行います。 実施内容 (1) ICTを活用した情報収集 [1] 農作業履歴 : 1人ひとりの農作業者が農作業情報収集スマートフォンアプリを使用し、農場に設置されたRFIDタグの情報を読み込むことで、いつ・だれが・どこで・なにを・何時間作業したかを、インターネット経由で富士通のデータ収集蓄積基盤に送信します。農作業者氏名タグ、農場区画タグ、種まき・散水・施肥などの作業内容タグの中から、農作業者自身の氏名タグや実際に作業する区画、作業内容のラベルが貼られたタグを選んでスマートフォンをかざすだけで、農作業内容を送信できます。 [2] 生育状況 : 農作業者が農作業情報収集スマートフォンアプリを使用し、作物の生育状況(丈の長さ・葉の数・実の数など)、病害虫の発生状況などについて、撮影した写真やコメントを富士通のデータ収集蓄積基盤に送信します。 [3] 気象データ : 本事業の農場のグリーンハウス内、および屋外に設置した気象センサーにより、温度、湿度、雨量、日照量を1時間、または10分ごとに測定し、富士通のデータ収集蓄積基盤に蓄積します。 [4] 土壌データ : 本事業の農場に設置した土壌センサーにより、土中水分量、土中温度、電解質などの情報を1日に3回測定し、富士通のデータ収集蓄積基盤に蓄積します。 [5] 市場価格情報 : ベトナム政府女性連合の13名が、調査員として本事業に参加します。各調査員が同市内のスーパーマーケットや市場の1店舗を担当して野菜の販売価格、産地、状態(写真撮影)などを調査し、市場価格情報収集スマートフォンアプリを使用して送信します。データはインターネット経由で富士通のデータ収集蓄積基盤に蓄積されます。 (2) 農業実証におけるデータ活用 富士通のデータ収集蓄積基盤に蓄積されたデータは、作物ごと、畑ごとなどで分類・集計され、変化や推移が分かりやすいように、グラフ化して表示されます。ハナム省の本事業に参加している農業従事者や、富士通、富士通ベトナム、イオンアグリ創造、JICAベトナム事務所は、インターネット経由で、ほぼリアルタイムの農作業の状況や作物の生育状況を確認できます。 イオンアグリ創造の担当者は、これを利用し、日本国内のオフィスからインターネット経由で作業状況や農作物の生育状況を把握し、現地の農業従事者への指示や助言を行います。イオンアグリ創造の有識者と農作業者の間、および農業従事者間で正確な情報をタイムリーに共有できるため、環境変化や農作物の状態に応じた迅速な対応が可能となります。 ≪主なデータ表示機能≫・農作業情報登録機能(スマートフォンンアプリ)・農作業履歴一覧表示機能(WEB)・画像詳細表示機能(WEB)・各種グラフ化機能(WEB) (3) 市場価格情報調査におけるデータ活用 ベトナム政府女性連合の調査員が送信した店舗ごとの農作物商品の写真や価格などの情報は、富士通のデータ収集蓄積基盤上で集約され、ハノイ市の地図上にマッピングされます。JICAベトナム事務所、富士通、富士通ベトナム、ベトナム政府女性連合の調査員は、市場価格情報収集スマートフォンアプリを利用し、市場価格情報を確認できます。 ≪主な機能≫・市場価格情報登録機能(スマートフォンアプリ)・市場価格情報閲覧機能(スマートフォンアプリ) (4) パイロット事業の評価 富士通と富士通ベトナム、イオンアグリ創造は、ベトナム国の農業へのICT導入、日本式農業指導、および市場価格情報調査の有効性と効果について調査結果を報告書に纏め、2016年3月にJICAベトナム事務所に報告予定です。 商標について 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。 以上 注釈 注1 富士通株式会社: 本社 東京都港区、代表取締役社長 田中 達也。 注2 Fujitsu Vietnam Ltd.: 本社 ベトナム社会主義共和国ハノイ市、社長 工藤 成。 注3 イオンアグリ創造株式会社: 本社 千葉県千葉市、代表者 福永 庸明。 注4 独立行政法人国際協力機構ベトナム事務所: 所在地 ベトナム社会主義共和国ハノイ市、所長 森 睦也。 注5 富士通ミッションクリティカルシステムズ株式会社: 本社 神奈川県横浜市、代表取締役社長 濱場 正明。 注6 GLOBAL G.A.P.: GAP(Good Agricultural Practices)は、農業生産の環境的、経済的及び社会的な持続性に向けた取組みであり、結果として安全で品質の良い食用及び非食用の農産物をもたらすもの。GLOBAL G.A.P.は欧米を中心に普及している、実質的なGAPの世界水準規格。