飯野海運/経常利益は前年比57・7%減(2022年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結))
2022年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
単位・百万円
売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2022年3月期第1四半期 23,604 7.9 1,098 △58.3 1,177 △57.7 90 △97.0
2021年3月期第1四半期 21,875 △4.9 2,630 723.0 2,785 - 3,021 -
(注)包括利益 2022年3月期第1四半期 1,764百万円 (△39.1%) 2021年3月期第1四半期 2,898百万円 (-%)
(略)
(1)経営成績に関する説明
当第1四半期連結累計期間の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19。以下、「感染症」という。)のワクチン接種が世界的に進展する中、国や地域差はあるものの、全体として景気拡大の動きが見られました。
米国経済は、ワクチン接種の進展により活動再開が進み、個人消費を中心に順調に回復しており、中国においても堅調な個人消費や固定資産投資を受け、景気の拡大が持続しました。欧州経済は、依然厳しい状況にあるものの、感染症拡大の抑制とワクチン接種の進展により行動制限措置が緩和され、景気持ち直しの動きが見られました。
一方、我が国の経済は、持ち直しの動きが続いているものの、感染症再拡大による3度目の緊急事態宣言発出が消費の下押しとなるなど、依然として厳しい状況が続きました。
当社グループの海運業を取り巻く市況は、ドライバルク船では高い水準で推移しましたが、ケミカルタンカーや大型原油タンカーでは低調に推移しました。また、感染症の影響による船員交代の制限等の運航上のリスクは解消されず、予断を許さない状況が続きました。このような状況の下、当社グループでは、既存契約の有利更改や効率配船への取り組みをはじめとして、運航採算の向上を図りました。不動産業においては商業テナントの営業やイイノホール&カンファレンスセンター等で感染症の影響を受けておりますが、事務所テナントは順調な稼働を継続していることから全体としては安定した収益を確保しました。また、当社が参画している日比谷フォートタワーは、予定通り2021年6月末に竣工しました。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間においては、売上高は236億4百万円(前年同期比7.9%増)となりましたが、ドライバルク船市況が高水準であった一方、ケミカルタンカーや大型ガス船の市況が前年同期と比較すると低調であったこと等により、営業利益は10億98百万円(前年同期比58.3%減)、経常利益は11億77百万円(前年同期比57.7%減)となりました。また、保有する株式の評価損を計上したことから、親会社株主に帰属する四半期純利益は90百万円(前年同期比97.0%減)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当第1四半期連結累計期間の外航海運市況は以下の通りです。
大型原油タンカー市況は、経済活動及び原油需要の回復により、OPECプラスの協調減産は段階的に縮小しているものの、解撤等に伴う船腹供給量の調整が遅れており、恒常的な船腹過剰から低迷が続いております。
ケミカルタンカー市況は、プロダクトタンカー市況の低迷によりケミカルタンカー市場にプロダクトタンカーが引き続き流入していることから、総じて低調に推移しました。原油価格の高騰に伴い燃料油価格が上昇する中、運賃が増加する航路も一部見られましたが、燃料油価格の上昇分をカバーする迄には至りませんでした。
大型ガス船のうち、LPG船市況は、当第1四半期初において中国PDHプラントの稼働や入渠船増加に支えられ緩やかな上昇傾向となりました。その後不需要期の荷動き減やLPGの東西価格差の縮小により一時市況は軟化したものの主に北米出荷量増加により裁定取引が拡大した影響から、全体としては堅調な推移となりました。LNG船市況は、中国を中心とするアジア向けの米国産LNG供給増加によるトンマイル増加に加えて、昨年末の厳冬により船腹供給不足に陥ったことを踏まえて用船者が既に今冬へ向けた船腹確保を開始したことから、6月以降の市況は上昇しました。
ドライバルク船市況は、感染症へのワクチン接種等の普及により経済活動が再開・拡大し、原材料や製品荷動きが増加したこと、中国向け穀物需要が引き続き旺盛なこと等を背景に、年初より本格化した市況回復の流れを引き継ぎ、当第1四半期を通じて高い水準で推移しました。
なお、当第1四半期連結累計期間における当社グループの平均為替レートは¥109.80/US$(前年同期は¥107.74/US$)、船舶燃料油価格についてはC重油380cStの平均価格はUS$373/MT(前年同期はUS$207/MT)、適合燃料油の平均価格はUS$496/MT(前年同期はUS$328/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
大型原油タンカーにおいては、入渠船の影響を完全に避けることはできませんでしたが、支配船腹を長期契約に継続投入し、安定収益の確保に努めました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州向け及びアジア向けの数量輸送契約に加え、北アフリカからの燐酸液やアジア域からのスポット貨物を積極的に取り込むことで稼働の維持に努めました。当社と米国オペレーターとの合弁事業においては、安定的な数量輸送契約に加え効率的なスポット貨物の集荷に取り組み、稼働を維持しました。しかしながら、低調な市況による影響を避けることはできませんでした。
大型ガス船においては、LPG・LNG船共に、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保しました。また、経営資源の有効活用及び資産効率向上のため大型LPG船1隻を売却しました。なお、売却した大型LPG船は12月31日を決算日とする連結子会社が保有していたため、固定資産売却益の計上は第2四半期連結会計期間を予定しております。
ドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献したことに加え、ポストパナマックス及びハンディ船型を中心とする不定期船部門においても、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努めました。
また、一部では高騰したドライバルク船市況を享受したことで、運航採算は当初計画を大きく上回る水準で推移し、収益の確保に寄与しました。
以上の結果、外航海運業の売上高は187億13百万円(前年同期比8.5%増)、営業利益は2億円(前年同期比88.0%減)となりました。
②内航・近海海運業
当第1四半期連結累計期間の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航ガス輸送の市況は、石油化学ガスの輸送需要が減少したことや、感染症拡大によりLPG需要が減少したこと等から総じて低調に推移しました。石油化学ガスの出荷量はプラントの定期修繕のため減少しましたが、一定量のプラント間転送需要と船員不足に伴う稼働隻数の減少も影響し、船腹需給は均衡して推移しました。LPG需要のうち、プラント間転送需要は堅調に推移した一方で、民生用LPG需要は引き続き感染症拡大の影響による外食及び観光産業需要の減少により低調に推移しました。
近海ガス輸送の市況は、主要貨物であるプロピレン、塩化ビニルモノマーの国内生産量が中国向け輸出に牽引され堅調に推移しておりましたが、国内プラントの定期修繕による生産量の減少もあり、軟調に推移しました。感染症の影響による輸送需要の鈍化に伴い、当社が主力とする3,500㎥型高圧ガス船の市況は前年度の軟化基調のまま横ばいとなりました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航ガス輸送においては、感染症の影響によるLPG需要の低下及び石油化学ガス出荷プラントの定期修繕による出荷量減少の影響を受けましたが、中長期契約に基づく安定的な売上確保と効率配船に取り組みました。
近海ガス輸送においても出荷プラントの定期修繕による出荷量減少の影響を受けましたが、当社の安定運航への評価を得た結果、定期用船契約更改時において市況軟化の影響を最小限に留められ、安定的な貸船収入の維持に努めました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は21億91百万円(前年同期比6.0%増)、営業利益は29百万円(前年同期比50.7%減)となりました。
③不動産業
当第1四半期連結累計期間の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、感染症拡大の影響がオフィス市場にも本格的に現れ、下降基調はより鮮明になりました。国内企業はリモートワークを拡充し、これまでの増員計画をベースにした増床移転の見直しや固定費削減のための事業所縮小等を行い、オフィス需要が減少したことから賃料は下落が続き、空室率は2014年8月以来、約7年ぶりに6%を上回りました。
貸ホール・貸会議室においては、顧客獲得競争が続く中、感染症の再拡大を受けてイベントの自粛が続き厳しい状況となりました。
不動産関連事業のフォトスタジオ事業においては、感染症拡大の影響により撮影需要は依然として低調なまま推移しました。
英国ロンドンの不動産市況は、事務所テナントではリモ-トワークの普及により既存テナントが自社スペースを転貸する等の動きがみられ、空室率が若干上昇しました。商業テナントでは感染症の拡大を受け厳しい状況となりましたが、感染症対策による規制は順次緩和されつつあります。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
当社所有ビルにおいては、商業テナントの営業に感染症の影響はあったものの、事務所テナントは堅調な稼働を継続し、安定した収益を維持することができました。
また、当社が参画している日比谷フォートタワーは、予定通り2021年6月末に竣工しました。当ビルは安定した収益の確保に貢献すると共に、敷地内約3,000㎡の緑地化や、直射日光を入れない長さ2.8mの庇を導入することで電力使用量を削減すること等により、地球環境の改善にも寄与しております。
当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、感染症再拡大による緊急事態宣言の再発令やイベントの開催制限により、イベント需要の回復が見られない中、稼働と収益に大きな影響を受けました。
フォトスタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、撮影需要が減少する中でも万全の感染症対策を実施して顧客確保に努めたものの、低調な広告需要の影響も重なり、厳しい状況が継続しました。
英国ロンドンの不動産事業においては、賃貸ビルで商業テナントについては感染症の影響はあるものの、事務所テナントは順調に稼働したため、収益を維持することができました。
以上の結果、不動産業の売上高は27億61百万円(前年同期比6.2%増)、営業利益は8億69百万円(前年同期比3.7%減)となりました。
(略)