鴻池運輸/ミャンマーにおける農産品の物流近代化への貢献をめざす国交省の「物流パイロット事業」を受託
ミャンマーにおける農産品の物流近代化への貢献をめざす国交省の「物流パイロット事業」を受託ー鴻池運輸が同国内で6 月〜7 月に実証実験を実施中ー
国土交通省 物流審議官部門が進めている「物流パイロット事業」の平成28年度の取り組みの一つとして、「ミャンマーにおける農産品に係る物流近代化に関する実証事業による調査」を受託し、本年6 月23日-7 月13日まで、同国で実証実験を実施しています。マンゴーをはじめ農産品の選定から集荷、配送、輸出のプロセスにおける課題に、当社の提案する品質・鮮度保持技術がどの程度効果的かを実証します。これは、国交省が募集した本パイロット事業に、当社が提案した調査事業が選定されたもの(6 月22日、国交省公表URL:http://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000265.html )です。
当社は、ミャンマーの農産品物流に関わる課題解決に向けた高品質なサービスを提案・提供することで、同国の健全な発展に貢献することを目標に、本実証を通じて解決策を検証します(下記補足ご参照)。
【背景と概要】
1.ミャンマーの農産品物流の現状
高い経済成長を期待されているミャンマーは、農産品輸出国としても高いポテンシャルを有しており、その輸出額は2013 年度の輸出総額(11,204 百万ドル)のうち、約2 割を占め、ここ数年で5 倍以上に増加しています。就労人口は全体の6 割を超え、GDPも約3 割を占めている一方、生産性が低く、インフラ整備、生産技術の向上、流通の整備が課題となっています。
特に、農産品の出荷品質向上・安定化技術や選別技術の遅れに加え、道路事情の悪さ(未舗装比率約8 割)や物流技術の低さ※による輸送時の品質劣化が大きく、輸出基準を満たさない作物が未だ多いという問題があります。
※野菜の主要生産地は大都市圏から離れており、生産地に保管用定温倉庫もないため、売れ残りはそのまま廃棄されています。
また定温車両も少なく鮮度保持流通は非常に困難で、さらに農産物をトラックの荷台に直積みしたり、網袋や木箱、竹籠などを使用するため、ダメージが大きいのが現状です。
2.日本の物流企業の進出の課題
ティラワ特別経済区の開発などASEAN諸国の新たな物流拠点として注目される一方、交通インフラ整備の遅れや仲介業者(ブローカー)が強い伝統的な流通ルートが中心であることなど、物流企業の進出には課題も山積しています。
3.今回の取り組み
上記課題に対して、最新の物流機器などを用いた日本の質の高い物流システムを導入し、効果測定と課題調査、分析を行い、同国の物流近代化に貢献するとともに当社の現地での事業化の礎とすることを目指しています。
【具体的内容】
ミャンマーでマンゴーの輸出に取り組む「Myanmar Golden Produce 社」(以下MGP 社)のご協力のもと、マンゴーおよびその他の農産品の生産地から国内外の消費地までの、物流における廃棄率の低減と海外の販路開拓を目的とした高付加価値化、品質保持のための対策の有効性の実証実験に取り組みます。
1.マンゴーの高付加価値化実験
主要な生産地であるシャン高原から集荷地マンダレーのMGP 社集荷施設にマンゴーを輸送し、炭そ病予防用簡易蒸熱処理装置、光センサー付き選果機などを用いて品質の安定化を図り、その有効性を実証します。
2.物流技術・機器を用いた農産品(キャベツ、トマト、ケールなどの野菜)の輸送実験
流通段階における農産品の廃棄率が高いミャンマー国内輸送、さらにタイのバンコクまでクロスボーダー定温輸送(越境輸送)を行い、鮮度保持剤、防振パレット、オリコン(折り畳みコンテナ)、振度(衝撃度)・温湿度計測器、冷蔵車両などの提供を通じて効果を実証します。
【スケジュール(予定)】
上記1. マンゴーの高付加価値化実験:
6 月23日から マンダレーにおける選果・蒸熱処理の効果測定
上記2. 物流技術・機器を用いた農産品の輸送実験:
6 月27日から30日 シャン高原⇒ ヤンゴン(ティリミンガラー市場)
7 月10日から13日 ヤンゴン ⇒ バンコク(タイ)
※写真左:選果機
写真右:防振パレット
【補足】
〜本事業に対する当社の想い〜
アウン・サン・スーチー 国家最高顧問は、長期的な経済発展に資する雇用創出を重視されており、農業従事者が就労人口の6 割以上を占めることから、国際市場において競争力ある農作物を如何に創出していくかなど、農業分野における日本からの支援に期待を示しておられます。
当社は今回の取り組みを通じて、同国の抱える社会的課題の中で、特に以下の2つの課題に対する解決に貢献し、そのことが将来にわたり同国が健全に発展されるための一助となることを強く願い、今回の成果をもとに継続的に取り組んでいきたいと考えております。
【1. 適正価格での直接買い取りによる農家の生活改善】
農産品が市場に流れていく過程で複数の仲介業者が関わっている状態が、農家の所得の改善を妨げている現状があります。そこで、今回はMGP社の協力を得て、農家よりマンゴーを適正な価格で直接買い取る仕組みを試行します。
【2. 物流改善による農産品の販路拡大】
まずは、マンゴーの品質を維持したまま販売先まで届ける物流手段(ノウハウ、資材、機器)を試験導入することで、流通途上の品質劣化ロスの低減効果を測定します。将来的には国内の都市部や、販売価格の高い海外での販売を可能にすることができると考えています。
当社は、今回の実証実験成果を踏まえて継続的な取り組みを続けることで、ミャンマーにおける農業従事者が抱える様々な問題解決に貢献していきたいと考えています。